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水無瀬村-(20)

 みさきさんが消えました。

 誰もいない部屋で私は立ち尽くしてしまいます。


「まさか…逃げようとしたから…?」小さく呟いて考え込みます。

「おい、雨!」顔を上げるとヨルが覗き込んでいて、我に帰りました。

 みさきさんの部屋を見渡します。

 綺麗に整えられていて、誰かと争った形跡や侵入者がいた形跡もありません。

 私はもしやと思い、ベッドに近づいて掛け布団を捲ります。


 掛け布団の下。

 ベッドのシーツは白く、清潔に保たれていることがわかります。

「……黒いシミが、ありませんね…」そのことに私は少しだけホッとしました。

「この部屋は特に、あの嫌な臭いはしていないしな」隣で同じようにシーツを見ているヨルが言いました。

「そうであれば、生贄になったと言うわけではない…?」

「雨、刀屋 みさきを探そう」ヨルの言葉に私は頷きます。


「何処から探す…?」

「とりあえず、もう一度お屋敷の中を探しましょう」

 私達は急いでみさきさんの部屋を出ると手分けしてお屋敷を隈なく探索しましたが、みさきさんは疎か、小さな異変も見つけることが出来ませんでした。


「まるで神隠しにあったようです…」手を顎に当てて考えます。タイミングとしてはありえるとは思いますが…神隠しなんて…ですが、夢や怨念など超常的なことが起きていますからね…。手掛かりがない以上どうするべきでしょうか。


「雨さんにヨルさん?」後ろから声がしました。

 私はその声の方に勢いよく振り返りました。


「…みさきさん?」そこにはみさきさんが立っていました。

「どうしたんですか?…お化けでも見たような顔していますよ」可笑しそうに笑うみさきさん。

「あ…みさきさん、今までどちらに?」

「私ですか?私は蔵にあるものを取りに行っていましたよ」手に持っている物を掲げました。


「それは…?」私が尋ねると「これは…今までの記録です。私の、この村の罪の」と、それを見つめますが、瞳に込められた感情は見通せませんでした。


「ところで、慌てていたようですが、何かあったんですか?」彼女は顔を上げて首を傾げます。

「あー…朝、みさきさんがいないので、もしかして消えてしまったのではないかと…そんな訳がなくて良かったです…あはは、は…」説明しながら誤魔化すように笑いました。完全に杞憂でしたし。でも昨日のあれは今思えばフラグっぽかったんですもの。


 安心した途端に私のお腹がぐーっと鳴ったので慌てて押さえます。最悪のタイミングです。


「ふふ…心配して下さったんですよね?…ありがとうございます」堪え切れてない笑いが含まれた感謝の言葉をいただきました。ヨルの呆れた声も聞こえます。

「安心したところで飯でも食べるか、なぁ雨」ヨルめ…!折角みさきさんが流してくれたのに、蒸し返すようなことを…!

「そ、そうですね!朝ですしね!みさきさん、台所をお借りしても良いですか?」台所の使用許可を貰えたので私は逃げるようにその場から離れました。


 朝御飯の後、私達は話をします。

「結局、どうだったんだ?」ヨルが尋ねます。

 朝は二度手間になるからと話をしませんでしたが、全員が揃った今、最優先で共有することですね。

 みさきさんが不安そうな顔でこちらを見ています。


「そうですね…結論から言えば、成功したと思います。夢を見ることもなかったです」私の言葉にみさきさんの顔色が変わりました。

「それなら…!」

「はい、なのでこれからみさきさんの髪を依代にして再び儀式を行いましょう」

「……これで帰れるって事か」やれやれと言った顔でヨルは言います。


「…村の人達にも話をするべきですよね」みさきさんが呟きます。

「はい…形としては勝手に生贄を辞めるわけですからね…話はする方が良いとは思いますが…」

「話に行ったら断罪されるか監禁されるんじゃないか…?この先、生贄は夢を見ている人間…要するに自分達になるって事だろう?」ヨルはどうでも良さそうな顔で言い放ちます。

「その可能性はあるので、このまま私達は何も語らずに逃げ出すか、村の人達に説明をして依代を使った儀式をするかを選んでもらう必要があると思います」そこまで言ってみさきさんを見ました。


 彼女はしばらく考えた後に、顔を上げると言いました。

「私はこの村が嫌いです…でもこのまま逃げたらこの先、村の人達は消えてしまいます。だから…正直に話して選択肢を残したいです」

「捕まるかもしれませんよ…?」捕まる確率の方が高いと思います。

「それは…覚悟の上です」彼女の表情には決意が見えていて、説得は恐らく難しいでしょう。


「なら…最後まで付き合いますよ。依頼人を守るために」私はにっこりと笑います。

「危なくなったら雨を連れて逃げるからな」隣のヨルが嫌そうな顔で言いました。

「…ありがとうございます」みさきさんは私達に深く頭を下げました。

「それでは、まずはみさきさんの髪を依代にしに行きましょうか!」

 私達は顔を合わせて頷き合うと、神社に向かう事にしました。

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