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水無瀬村-(18)

 成功した、とは言っても、そう感じただけなので手放しに喜んではいけません。

「雨さん…どうかしましたか?」突然、反応がなくなった私が気掛かりだったのでしょう、みさきさんが私の肩をゆすります。

「…あ、いえ。みさきさんも気が付きましたよね?声や空気の変化に」

「……?」なんのことですか?と顔が言っています。

「ヨルが止まった後、恐らく依代を投げ込んだのだと思いますが…その時、周囲がざわめいたりとしていたのですが…そうですか、気が付かなかったですか…」私だけに起きたと言うことは、やはり依代となったのは私の髪だったからと考えるのが自然ですね。


「…みさきさん、実験は成功したと思われます」私の言葉にみさきさんの目が見開かれます。

「本当ですか!では、生贄のマーキングはもう…?」安堵した表情のみさきさん。

「ですが、まだ本当に成功したかを確認する必要があります」そう言うとわずかに目が曇りました。

「まぁ、そんなに心配しないでください。ただ一晩、様子を見ましょう。そこで私が夢を見なければ…」

「本当に成功。ということですね!」みさきさんが言葉の続きを引き継ぎ、2人で頷き合います。


「ということで、ヨルが戻ってくるのを待って、戻りましょう。あ、みさきさん。刀屋のお屋敷に泊めてもらえませんか…?誰かに見つかるわけにもいかないので…」志乃さんにも無理を言ってチェックアウトさせてもらいましたし、私を生贄にすると言うことがどこまで知られているかわかりませんから。

「私は構いませんよ。大しておもてなしが出来ませんが…私…」みさきさんはもごもごと何かを言います。

「…?最後なんて言ったんですか?」耳に手を当ててもう一度と促します。

「……私、料理がとても…壊滅的に下手なんです…」みさきさんは私の耳元でコソッと答えてくれました。

「ああ…気にしないでください!それにもう遅い時間ですから!眠るところだけ借りれたら嬉しいです!」

「…そうですか…?志乃さんから、雨さんは大層な美食家だと聞いていたので…」そんな噂が…!

「そ、そんなことないですよ?食べ物は何でも大好きですよ!」

「雨…あまりフォローになってないぞ…」いつの間にか湖から戻ってきたヨルにツッコまれました。

「まぁ…雨は美食家と言うより大食…あ、イテ!」

 余計なことを喋るヨルは正義のハリセンでお仕置きです。ああ、名ハリセン…神切丸。今宵も良い音を響かせ、悪を成敗しましたね。

 私は手中にあるハリセンをうっとりした表情で眺めます。

「いつも思うが、そのハリセンは何処から出したんだ…」ヨルは叩かれた場所をさすりながら白い目でこちらを見ています。

「古来から、こう言ったアイテムは突然現れるものなのですよ」空間収納なんかではありませんよ。


「さて、冗談は置いておくとして。ヨル、お疲れ様でした」

「ああ…こちらは何もなかったか?依代を投げ込んだとき嫌な気配が途切れるのを感じたんだが」

「嫌な気配ですか?」ヨルも感じた気配に思わず聞き返します。

「世の中を妬む、怨む。そんな気配だな」

「ふむ…きっと私が感じたものと同じでしょう。正体不明の何か。ですが途切れたのなら問題はないはずです」同意するようにゆっくりと頷くヨル。

「雨がそう言うということは成功したってことか…なら、次は刀屋 みさきの番だな」ヨルは安心した顔で笑いました。

「その事ですが、まだわからないので、本当にマーキングが移ったのか、刀屋のお屋敷で一晩明かそうと思います。ヨルも一緒に行きましょう」ヨルに手を伸ばします。

「む…刀屋の屋敷か…」手を取ることを躊躇しているようです。

 私が「…嫌ですか?」と言えば、「…いや、雨が行くなら行くよ」と少し考えた後、私の手を取りました。

「ありがとうございます。では、みさきさん。村の人達に見つからない内に移動しましょう」みさきさんに告げると三人でひっそりと移動を開始しました。


「……雨」お屋敷に向かう道を歩きながらヨルが低く呼びかけました。

「どうしましたか?」

「雨から、あの“臭い”がもうしない」

「そうですか」足を止めずにそう答えて彼を見上げると、ヨルは眉をひそめていた。

「驚かないのか…?」

「それよりやはり成功した、という確信が強まったので嬉しいですかね?」ニッコリと笑い返しました。

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