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水無瀬村-(12)

「みさきさんから聞いた話と併せて考えると、かなり強引な気はしますが、黒い人型のシミは生贄になった人なのではないでしょうか…?」私が口にすると、客間の空気が凍りつきました。


 みさきさんはしばらく黙り込んだ後、小さく唇を噛んで言いました。「……その可能性は、あります。ただ……私の読んだ記録はほんの一部にすぎません。本当は、もっと続きがあるんです」そこで一呼吸置くと「……もしよろしければ、蔵にある記録をご覧になりますか? まだ残されているものを、私一人で抱えておくよりも……」と提案しました。

「………行きましょう。私にも記録を見せてください。ヨルもそれでいいですよね…?」私はしばらく考えると返事をしました。隣に座るヨルにも確認すると、難しい顔をしていましたが頷いてくれて良かったです。さて、記録には何が記されているのでしょうか?内容を確認する事で謎が解明して説得の材料になるといいのですけど。


 客間を後にした私達は、みさきさんの案内でお屋敷の敷地内にある蔵までやってきました。ヨルも本当は早く帰りたいはずなのにとりあえず私に付き合ってくれています。

 土蔵造りで建築されている刀屋家の蔵は、長い年月を経ても綺麗に保たれていて、大事にされている事が伺えました。入り口に位置する場所の大きな観音扉はしっかりと施錠されています。みさきさんが開錠して扉を開くと蔵の内部から木と埃の香りとじめっとした空気が流れてきます。


「雨さん、すいません。電灯が故障してしまっているので…」と手に持っていた懐中電灯を掲げました。みさきさんが懐中電灯を手にした時、古い蔵なので薄暗いからかと思っていましたが、この為でしたか。私が「ありがとうございます」と返すとみさきさんは安心したように息を吐きます。私の後ろにいるヨルをちらっと見ますが気にしてもいなさそうです。


 小さく頭を下げると「記録は、こちらです」と蔵に入っていくみさきさんに連れられて私達も侵入します。小窓があるにも関わらず、内部は暗くなっていましたが、みさきさんは慣れた様子で内部を進んでいきます。懐中電灯の灯りだけなのでよくわかりませんが、蔵は外から見るより随分と広く感じました。

「…何やら探検している気分になりますね」ヨルに話しかけます。

「真面目な声で何を言ってるんだ…」呆れた声で、気を付けないと転ぶぞ、と続けました。

「もう…子供じゃないんですから、転ぶわけ…わっ!」その時、何かに足を取られてバランスを崩しました。咄嗟にヨルが腕を掴んでくれたので転びませんでした。

「大丈夫ですか!?」私の声にみさきさんもすぐに振り返ってくれました。私は手を挙げて問題ないと応えます。

 みさきさんは申し訳なさそうに「怪我がなくて良かったです…蔵には整理が追い付かないまま出しっ放しになっているものがかなりあるので気を付けて着いてきてくださいね」と前に向き直って進んでいきます。

「…だから言っただろう。気を付けてくれ…」

「わ、私はヨルみたいに暗い所で目は効かないんですよ…!そんなに言うなら手を繋いでいてください!」差し出した私の手を「そんな、めちゃくちゃな…」と言いながらも握ってくれます。

「さて、行きましょうか!置いて行かれてしまいます!」わざとらしく気を取り直して、少し先にある光を後を追いかけました。


 去り際にバランスを崩した場所を見ました。みさきさんがこちらに来てくれた時に懐中電灯で照らされた場所。照らされたのは僅かな時間でしたが、そこには不思議な事に何もありませんでした。何かに躓いたはずなのに。


「これに記載されていました」そう言ってみさきさんは仕舞われていた本を手に取りました。

「この本に…」私はそれを受け取ると、ぱらぱらと中を見ます。と言っても暗いので全然見えませんけどね。

「雨。一回、蔵の外に出てから確認しよう」ヨルに賛成します。

「わかりました、行きましょう」みさきさんを見ると何処か上の空でした。

「みさきさん…?」私がそう言った時、急激に眠気が…。体を支える事が出来ま…せん…。

「雨、大丈夫か!?」ヨルが心配してくれる声が聞こえました。ですが、しばらくするとヨルの声も聞こえなくなってぼんやりとした衝撃と共に私の意識は落ちました。


 

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