1話
いつもの日常がやってきた。特になんの変化もないごく普通の日常だ。私は最近、仕事の長期休暇をもらって、家でほぼ一日中過ごす生活になってしまった…。まぁでも、トップが家に遊びに来たりするおかげで暇はしていないが、なんだかんだ言って仕事の方がまぁまぁ暇つぶしになってたから少し残念な気がしている。それはそうと、今日もトップが家に来ている。今日はどんな暇つぶしをさせてくれるんだろうか?
……それにしても、トップ可愛すぎない?私より年下だし、なんなら学生の歳じゃないの…?特に……いや辞めておこう。「あ、今変なこと考えてでしょ?例えばさぁ…」「辞めましょう、近いです。私の心が持たないです。」うん…トップにはやっぱりなんでもお見通しだ…。「まぁそれはそうとさ、実は最近ここら辺に樹木ができたの知ってる?ちょーでかいヤツ。せっかくだし見に行かない?」そういえば、近所でそんな話を聞いた気がしたなぁ。まぁでもいい機会だし、トップと2人きりで行けるなんて滅多にないことだ。「行きたいです。」「決まりだね、じゃあ準備しようか。」…ラッキー!!これってデートっぽくない?!あぁ…本当にトップが恋人だったらいいのになぁ…なんなら、トップの分離体でもいい。あ、でも分離体はもう恋人ができてるんだったか……てことは本体のトップしかいない…いつか告白しようかな?
まぁそれはそうと、準備を終えて2人で家を出た。正直に言うと緊張する。「緊張するくらいなら楽しもうよ。」トップが走り出した…しかも私の手を握って…最高すぎる。そして、30分ぐらい歩いた所で、樹木の根元まできた。「おぉ…噂で聞いたぐらいだから、実際の大きさまでは考えもしませんでしたが…非常に大きいですね。」私が見とれていると、トップがツンツンしながら言ってきた。「あそこ見てみな。」トップが指した方に目を向けると……なんかいる…そういえば、食人族、戦闘部族、異形生命体がこの樹木で共存しながら生活をしているとも噂で聞いた…通りでこの樹木で負傷者や遺体が発見されるわけだ。そして奴らはこっち側に全速力で向かってくる。
………うざい。実にうざい。トップとの2人きりの空間を邪魔されて、物凄く……腹が立つ。気づけば考えるよりも体が動いていた。奴らは集団で私に向かってきていた為、案外早く終わりそうだ。「相変わらず見ててすごいなぁ。集団を一気に蹴散らしてる。やっぱり目に狂いは無かった」後で聞いたがトップから見てて、私が1度殴ったりする度に数十人ほどに攻撃が当たっていたらしい。怒りであんまり見てなかった。気づけば辺り一面には倒れ込む民族と異形達で広がっていた。「うーん…普段怒らない人でも中にはこういう人も居るっていう勉強になったかな〜。」トップにあんな姿を見られて…正直少しだけ恥ずかしい気持ちがある…はぁ…今度は怒り抑えよう。
「ところでさ、この樹木の頂上ってどんな感じになってると思う?」「え?普通に葉で広がってるんじゃないんですか?」この状況で突然の予想外の問いかけに少しだけ困惑したが、普通誰もが考えるような答えをだした。「まぁそれが、普通の考えだろうね。けど…実はこの樹木の頂上には到達できないって言われてるんだよね。」…はぁ???到達できない?そんなのある…?「誰もまだ到達してないって言うだけではないんですか?」聞いたところによると政府がこの樹木の調査を行ったところ、いつまで経っても頂上どころか、葉の部分にすら到達できておらず未だ政府の調査員は上り続けているらしい。
「個人の考えとしてこの樹木無限の大きさなんじゃないかって思うんだよね。でも、別の意味での無限だけどね…。例えばね、有限を超えてそしてまた有限を超えての繰り返し、次から次へと有限を否定すればまた次の有限が、そしてその有限も否定すればまた次の有限が…有限なものから抜け出そうとするけど抜け出せず、ただ有限を否定するだけ。これは決して完結が無い無限とでも言っておこうかな…?」なるほどなるほど…無限ねぇ…よく分からない。
「それに対して樹木の場合は、同じく有限を否定するんだけど、そこから生まれた無限…完結の無い無限も否定するの。でも完結の無い無限とはちょっと違って有限を単に否定するだけじゃなくて自己の内に含めるの。有限から無限へと進むんじゃなくて出発点である有限を再び自己に含める。」
長い…非常に長いよ…頭が追いつきません。「よしっ、それじゃあちょっと頂上行ってみよか!!」「え?でも、頂上には行けないんじゃ?」トップは私の手を引っ張り上空へと超スピードで向かった。数分も経たないうちに頂上らしき所まで到達していた。「ほらここが頂上だよ。どう?」枝や葉がたくさんあるそしてさらに頂上へ行くと…根っこ?そしてまた上に行くと…意味がわからない…何故…最初の光景があるんだろう?「自己を自己の中に含める…樹木はこんな感じの無限なんだよ。何となくわかった?」「まぁ…なんとなくは…」あぁ…疲れたな…なんだか…「帰ろっか、疲れたしね。」