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chapter 4: Time Will Tell

ルアンは、敵国ネーションに密入国した。

夜の海は、恐怖でしかなかった。

何時間も小さな船に揺られ、船酔いにゲッソリしながらの航路だった。

体重が何キロも削られたように思ったが、なんとか入国できた。

そしてユニオンのスパイに、アマンダのスケジュールを教えられ、その場所に急いだ。

本当にアマンダに会えるのか。

ルアンは、思った。

そして、彼女を殺すのか?

…自分のために?

道路の向こうに、彼女が見えた。

もう2度と会えないと思っていた彼女の姿だった。

そして、ルアンは、彼女の前に一歩踏み出した。

彼を見て、アマンダは驚いた。

「偶然… じゃないよな?」

「……」

「わかんないと思ったのに… アタシのこと、バレてんだな…」

「……」

「どうやって来たんだ?」

「…密入国」

「マジか。ヤバいな」

「なんで逃げたりしたんだよ!」

それには答えずに、彼女はいった。

「アタシが抜けたあと、うまくやれてるのか?」

「……」

「ルアンはさ、弟みたいだったから気にしてたんだよ。アンタもこっち来たら? こっちの方が給料良いんだぞ」

「お金のために来たの?」

「それ以外あるかよ。あ! それと、あのクソ軍人どもに、復讐もできるんだぜ!」

「……」

「ウィリアムと違って、別にユニオンの理想に共鳴したわけでもないからなあ。理想なんて金持ってるヤツの遊びだろ」

「……」

「なんだよ! そんな顔するなよ! アホどもの押し付けてくるルールに従ってたって、テキトーに褒められて終わるだけだろ」

「こっちで上手くやれてるの?」

アマンダは、肩をすくめていった。

「いろいろいってくるアホは、どこにもいるけどな。

『べつにユニオン背負ってきたわけじゃなく、ネーションの考えに賛同したから亡命してきたんですから、イジメないでくださいよ~』

っていったら、まあまあ仲間っぽく思ってもらえたわ」

「アマンダらしい!」

「よくいうわ! アンタだって、アタシのマネしてたじゃん!」

「え! …ごめん」

「べつにいいんだよ、それは! ただの陰キャかと思ってたら、意外と賢くて、驚いただけだから。ムダなこだわりあるヤツより、よっぽど頭良いだろ」

ルアンをじろりと見て、アマンダはいった。

「なんだ。こっちへ来たんじゃないんだ。じゃあ何しに来たの?」

彼女を殺しに来た、とはいえない彼はいった。

「最後に、会いたかったんだ…」

「ふ~ん」

そして、世間話を少しした。

「こっちだとさ、スポーツとか個人じゃなく、国の代表として応援しててさ。感覚古いなあって思うよ。本当の意味で、スポーツを見てないんだよ」

「ニュースとかでさ、なんでもかんでも国に解決求めててさ。ユニオンだったら、企業が解決するような問題でも、国が解決すんの。ニュースで同じ話をずーっとやっててさ、最後に国が解決するんだよ。ウィリアムじゃないけど、そりゃあ国依存症になるわ、って思ったね」

ルアンがいった。

「ユニオンが恋しい?」

びっくりしたようにルアンを見返すと、アマンダはいった。

「冗談だろ! 思ったこともないよ!」

そして、自身を納得させるようにいうのだった。

「思ったほど変わんないよ! ユニオンもネーションも同じだって!」

ひとしきりしゃべったあとで、アマンダはルアンに聞いた。

「で、どうすんの?」

「…ユニオンに帰る」

ルアンを見て、アマンダは心配そうにいった。

「大丈夫か? 悲壮感ハンパないけど…」

「さみしくなるな、って思っただけだよ…」

「そっか…」

アマンダは、改めてルアンに向き合うといった。

「じゃあな…」

そして、彼から去っていった。

アマンダは、まったく振り返らなかった。

ルアンはアマンダらしいと思ったが、彼女は振り返れなかったのだ。

彼に、涙を見せたくなかったから…


結局、彼はなにもできなかった。


ユニオンに帰還した彼は、軍法会議で3年の懲役を言い渡された。

軍人としては異例の、軽い処分だった。

ゲーマー出身者に厳格な軍律を課すことに、上層部がためらいを見せたからかもしれない。


出所後、ルアンは戦闘機パイロットの経験を生かして、民間輸送機のパイロットになった。

アマンダが、どうなったかは不明だ。


そして、2大国家のネーションは今も存在し、ユニオンとの対立は、いまだに続いている…

お読みいただきありがとうございました。

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