chapter 2: The Harder They Come
ある日、ルアンが、アマンダに聞いた。
「人殺しに、罪悪感ない?」
彼女は肩をすくめていった。
「別に~。それにアタシらみたいなゲーマーにとって、他にこんなコスパ良い仕事ないでしょ」
「……」
「悩むなんて、ムダだって!」
ゲーマー仲間に、ウィリアムという男がいた。
彼は正義感の強いタイプで、いろんなことを考えて、ルアンと話していた。
ルアンは、完全に彼の影響を受けていた。
ウィリアムは、ユニオンの理想に感化されていた。
「インターネットの発達が、ユニオンという組織を生み出したんだ。ネットで世界が繋がるようになって、国家や国境は意味のないものになってしまった。なのにネーションの連中は、古い考えに固執している。彼らは国家が正しいという妄想のために、軍というムダなものに金と技術と人材を浪費しているんだ」
「ネーション政治家は国家で儲けているから、この体制を変えようと思っていない。自分たちに依存させてもっと儲けようと考えているだけの『国家ゴロ』だ」
「ユニオンで出世してオレたちが苦労したところを改善して、もっとすべての人々が生きやすい社会にしたいんだ」
だが、そんなウィリアムに、アマンダは疑問を感じていた。
「人ってそんなに賢いのかな。世界には知識が溜まっていって、社会はどんどん賢くなるけど、人自体はそんなに賢くなってない。だから人は戸惑って、社会に犯罪者が溢れてるんじゃないのかな。そもそも軍はいらないってウィルはいうけど、アイツはそもそも軍人じゃん」
ウィリアムは、以前からいる軍人たちと何度も衝突した。
彼の正義感が、旧弊な軍人たちの考え方と、どうしても対立するのだ。
軍人たちは、ウィリアムを煙たがった。
彼がいると、鏡に映る自分たちが醜く見えるように感じるのだった。
ある作戦中、彼の戦闘機は味方の援護から外され、敵の集中攻撃を受けた。
その日、ウィリアムは、基地に帰って来なかった。
ルアンは、悲しみに暮れた。
軍人たちは「事故」と片付けたが、それは仕組まれた死だった。
アマンダがいった。
「バカだよね。あっさり死んじゃってさ。生き残れないこだわりなんて意味ないよ」
ルアンは、何もいえなかった。
「アタシらだけになっちゃったな…」
気づけば、ゲーマーたちはみんな戦死して、ルアンとアマンダだけが残っていた。