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(第053話)酔いどれの女騎士、決断する

リンジーさんのご指名を受け、ミアさんは手に持ったジョッキ……ではなく、ジョッキサイズのグラスをテーブルの上に置いた。部屋に持ち込んだ酒のほとんどは、すでにミアさんの胃袋に収まっているようだ。数時間前、死の一歩手前みたいな大怪我したってのに、どんだけ酒強いんだよ。


大袈裟おおげさな言い方だな。そんなに大それたことをしようってわけじゃない」

「君はそう思ってるかもしれないけど、人間にとっては大きな一歩さ。なにしろ八英雄最強のミア・ドラウプニルが動くんだからな」


リンジーさんの返しに、ミアさんは小さく笑った。カラッとした笑いではなく、自虐的じぎゃくてきな、かげのある笑い。それから溜息ためいきをつくと、目をせて話し始めた。




「さっきの話……アタシは半年くらい前から、耳にタコができるくらい、この女に聞かされてきたんだ。けど、動かなかった。というより、動けなかった」


こ、これは……間違いない! ミアさん(弱ってる女上司ver.)だ!

しかも酒が入ってるうえ、セクシードレスを着ている! 

こいつはエロさ五割増しだ! これはもう妄想するしかない!


「正直に話すよ。八英雄が五人も殺されて、ビビッてたんだ」


さてと。では、どういうシチュエーションで楽しませてもらうかな。


「けど、どこからともなくやってきた男が、アタシの背中を押してくれた。いや……ケツを蹴っ飛ばしてくれたっていった方が近いな」


(ま、待て! アタシはお前とはそんな――)

(あれだけ弱った姿見せといて、今更強がっても無駄ですよ)


(お……お前、こんな……こんなことして――)

(はいはい。お説教は朝になってから聞きますね)




「聞いての通りだ。カーライル。私はしばらくガスパールの町を離れて、残り二人の八英雄……ルークとアニスに話をつけに行くつもりだ」


はっ! いかん!

真面目な話をしている最中に妄想するくせがついてきてしまっている!


「承知しております。ドラウプニル様の決断を支持いたします」

「心配しなくていいよ。さっき言った通り、魔王はこの町を落とそうなんて考えてないからさ」


「ただ……ルークとアニスは、八英雄の中でも筋金すじがね入りの変わり者だ。アタシ一人じゃ説得できそうにない。そこでタラキよ。一緒にきてくれないか?」


え? あ、ああ。俺も一緒に行くわけね。妄想直後に見つめられて、一瞬どきりとしてしまったよ。

けど、ミアさんは本気だ。こたえないと男じゃない。


「もちろん。一緒に行きますよ」

「ありがとう。アタシが認めた男だっていえば、あの二人も少しは話を聞いてくれるだろう」


「あ……あの! ミアさん! 僕も――」

「もちろん、ミルズくんも一緒に来てほしい。優秀な回復術師ヒーラーが一緒なら、アタシもタラキも心強いしな」


ミアさんにそう言われ、ミルズくんは両拳を突き上げた。そんなに喜んでくれると、こっちまで嬉しくなる……

っと、危ない危ない。()()()()()が見てるんだった。


「それと、カーライルにリンジー。まずは首都オルフセンに向かうつもりだが、そこまでは一緒に来てくれないか?」

「クラウディア様は分かりますが、私もですか?」

「ラルゴのことだよ。この町の医者はさじを投げた」


ラルゴ? ギデオンに操られていた、あの腰抜けラルゴ?

医者がさじを投げたって、どういうこと?


「やっぱりラルゴもか」

「ああ。もうずっと意識がないんだ。あのままでは衰弱すいじゃくして死んでしまう」

「まったく、まるでのろいだな。ほんと厄介やっかいだね」


え? 死ぬ? お……俺のせいじゃないよね?

確かに、強めに足刀そくとう入れましたけど……


「首都大学に、ギデオンに操られた人間を集めて治療……というより、研究している施設がある。そこに連れていけば、ラルゴは回復するかもしれない。カーライル。お前はラルゴにとって唯一ゆいいつ身内みうちだ。ついていてあげてほしい」

「確かに、あそこが駄目ならもう打つ手なしだね」


ん? 身内? 腰抜けラルゴがカーライルくんの?


「す、すみません。ラルゴさんって、誰でしたっけ?」

「ラルゴは私の叔父おじだよ。若い頃はドラウプニル様の御父上、シバ様の親衛隊を務めていたんだ」


へえ。そうだったんだ。あのラルゴが、若かりし日はそんなに勇敢ゆうかんな兵士だったとは。人間、年齢を重ねると臆病おくびょうになっていくのだろうか。

ていうかミルズくん、忘れてたんかい。




「ミア。ところで道中、寝室はどうするつもりだい?」

「……それ、重要なことか?」


「質問を質問で返すな! 寝室はどうするつもりだと聞いている!」

「個室だよ。当たり前だろう?」

「当たり前……当たり前か。そうだな……」


リンジーさん、また露骨ろこつながっかり顔だな。どうしても俺×ミルズくんのカップリングか、カーライルくん×ミルズくんのカップリングを実現させたいんだろう。


「さて、もう遅いし、今日はお開きにするか。タラキとミルズくんは今日は我が家に泊まってくれ。部屋を用意している」

「その部屋は別々なのか? それとも――」

「同じ部屋だが」

「よおしっ!」


うーんこの腐女子。悪いけど、期待しているようなことは何も起こらないよ。なんせ俺には、愛する女性がいるからな。いてもいなくても男には欲情よくじょうしたりしないけど。




それにしても、残り二人の八英雄か。ミアさんは筋金すじがね入りの変人だって言ってたけど、ちゃんと打ち解けられるんだろうか。


ってか、それ以前に、八英雄が何者なのかをミルズくんに聞かなきゃな。またあきれられるだろうけど、仕方ないか。

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