(第031話)嘘ついたら針億本
か……勝てるわけがない。
ラムダさんは1500年を生きた宇宙最強の女戦士。それが今、性を貪るロリサキュバスと化して、俺の純潔を全力で奪い取ろうとしている。
断言しよう。童貞に、抗えるわけないんだ!
って、そんなことを考えてる場合じゃないな。
リザベルさんとラムダさん、バッチバチ状態だ。
「ざ……残念でしたね。私はもう、多良木さんとキスしてますから」
「ほう。リザベルの分際で、よう頑張ったの」
「ふふふ。余裕ぶっちゃって。これだから子供は――」
「では、わらわは多良木の童貞を頂くことにするかの」
「あうぅ……」
あ。動揺してる。
「そ、それに、私には大人の魅力があります。ロリババアの貧相な体で、多良木さんが満足するとは思えませんけどね」
「貧乳はお互い様じゃ。それに、矢吹も言うておったじゃろ?」
矢吹さんが言ってたこと? それって……
まずい! それは尊厳を破壊する一言!
「わらわはこれから女へと成長するが、リザベルはもう――」
「や……やめて! 言わないで!」
リザベルさんは耳を塞いだ。
けど、そんなのはお構いなしに、ラムダさんの口はゆっくりと、例の言葉を……
「手遅れじゃ」
「わあああああっ!」
まさに痛恨の一撃。リザベルさんは予想通り泣いてしまった。
床を叩きながら、大声で。
やっぱり、一番言われたくないことだったんだな。
「多良木さん! アイツ、やっつけてください!」
子供か。
それに、さっきは無理だって言ったくせに……
「では多良木よ。始めようかの」
けどね。今、俺の心は……燃えてるんですよ!
「リザベルさん。あのときの話……覚えてますか?」
正直に言うと、ロリサキュバスが練り上げた性技とやらに興味はある。
そりゃもう、もの凄く。
「俺……言いましたよね。絶対にリザベルさんを裏切らないって!」
けど、俺が愛しているのはリザベルさんなんだ!
針億本なんて約束もしちゃったしね!
「リザベルさんが望むというなら! 俺はラムダさんを……おふぅっ!」
台詞が終わらないうちに、強烈な蹴りが腹に。
「ちょ……ちょっと待ってください! 先にルールを確認しましょう!」
「ルール?」
「じゅ……10パーセントの力で戦うというのは?」
「もちろん継続じゃ」
「乱舞技を使わないというのは?」
「乱舞技? 何じゃそれは?」
「もっちんぱおーんです」
「何じゃ。神獣の咆哮か。もちろん継続じゃ」
うう。日本語になるとホントに強そうだ。
「わらわとお主とでは力の差が大き過ぎる。ハンデ無しでは楽しめんじゃろう?」
「た……確かに」
なんだ。なんかいろいろあったけど、結局は当初の予定通りか。
残り10日でラムダさんに一撃を入れることができなければ、俺は異世界へ行かず、この部屋で修行を続ける。
変わったのは、そこにロリサキュバスがいるかいないかという1点だけ。
まあ、その1点がめちゃくちゃ大きいんだけど。
「ただし、10パーセント、神獣の咆哮はなしにしても、全力は全力じゃ」
ラムダさんの構えが変わった。
これ……最初に乱舞技を食らったときの――
「お主も全力で来い!」
「分かりました!」
間違いない。これがラムダさんの本来の構えだ。
父親の敵、何とか星人の何とかを倒したときも、きっとこの構えで――
そう思う間もなく、ラムダさんが一歩で間合いを詰めてきた!
速い!
「ぐうぅ!」
防御の隙間を潜り抜け、掌底が顎に入った。
あれ? 頭部を狙わないというルールは……なくなった?
「おほぉっ!」
そのまま流れるように、全身の急所に連撃が入る。
「このっ!」
苦し紛れに放った左フックを躱され、カウンターの肘。
やばい。強すぎる。
「はがあああぁっ!」
そして例の如く、ドルマゾーラに一撃。
「全力だと言うたじゃろ?」
な……なるほど。よく分かりました。
しかし、これで終わりじゃない! 俺には妄想リカバリがある!
さあ! リザベルさん(サキュバスver.)! 俺を楽しませてくれ!
あれ? リザベルさん(サキュバスver.)?
出てこない……
ま、まさか……! 以前はあんなに活き活きと俺の体を求めてきたのに!
「どうした? もう終わりかの?」
ま……待って! もうすぐ……現れる筈で……
駄目だ! 出てこない!
昨日のキス事件から続いている罪悪感が、リザベルさん(サキュバスver.)を潜在意識の奥に閉じ込めてしまっているんだ!
俺は再び、涙と涎と鼻水を撒き散らしながら、芋虫のように床を這いずり回った。もちろん、両手でドルマゾーラを揉みしだきながら。
「その痛み……何とかしたいのじゃな?」
はい。もうこれ、何回やられても地獄で……
「わらわを使ってよいぞ」
ラ、ラムダさん……? 何を言ってるんだ?
「気付いとらんとでも思うたか? 多良木よ。お主、リザベルとの情事を妄想しておったじゃろう?」
は、恥ずかしい。痛みでそれどころじゃないけども。
「わらわの貧相な体でよければ、好きなだけ使え」
使う? 使うって、どういう意味で……
「それとも、直に触るか?」
じ……直に?
ドルマゾーラの痛みにうなされていた俺は、そのときラムダさん(ロリサキュバスver.)が何を言っているのか、よく分からなかった。
けど、今は分かる。ドルマゾーラを揉んでいた筈の俺の右手が、何か別の、小さくて柔らかいものを包み込んでいるのだ。
「まだまだ小さいがの。お主が揉んでくれれば、ちっとは成長するじゃろうて」
これって……
慎ましくも可憐に主張する蕾?
駄目だ。小さかろうが大きかろうが、この柔らかさに童貞は抗うことができない。
針億本……まさか現実になってしまうとは。




