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(第025話)ゲームの真似ならいいらしい

「おっはようございまーす! 新しい朝が来ましたよー!」


今日は少し特別な朝。

けど、いつも通りの明るい声で、リザベルさんは起こしてくれた。


「どうです? 昨夜はよく眠れましたか?」

「いえ。やっぱり駄目ですね。イベントの前夜は」


リザベルさんはくすくすと笑った。


「それでは、いつもの言っていいですか?」

「はい。お願いします」


「さて、記念すべき720日目です。報告をお願いします」


720。最終日まであと10日。俺はロイとの再戦を、()()()この日に設定した。


「えっと……クラッピングプッシュアップを5000回、ドラゴンフラッグを5000回、プランクとリバースプランクを20分3回ずつ、ブルガリアンスクワットを左右5000回ずつ。全部()()()()ですけど」

「やっぱり、昨日と同じ数なんですね」


筋トレメニューが専門的な言葉に変わっているのは、リザベルさんがより負荷の強いものを調べてきてくれたからだ。


「俺……普通の奴ですから」

「《《いつも通り》》の状態で勝てるようにしておかないと駄目なんですよね?」


「俺の方が強いっていう自信はありますけど、やっぱり不安です。何かの拍子ひょうしで逆転されちゃうんじゃないかって」


前回の敗北のことは、今も脳裏のうりに焼き付いている。ドルマゾーラを痛打され、そこから目潰し、喉に手を突っ込むという残虐行為ざんぎゃくこういのオンパレードだった。死なない体だとはいえ、殺す気で向かってくる敵というのは、やはり怖い。


そのとき……俺が不安そうな顔をしていたせいか、皇帝カイザー戦のときと同じように、リザベルさんは俺の手をとり、そっと胸元に近付けた。つつまましくも可憐かれんに主張するつぼみ。妄想リカバリをする度にれてきた小さなふくらみが、手を伸ばせば届くところまで接近する。


「大丈夫ですよ。勇者様は絶対に勝ちますから」


リザベルさんの顔……真っ赤だ。

そしてきっと、俺の顔はそれ以上に……見てられないくらいに真っ赤なんだろう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


でよ! コルネリアの女戦士ラムダ! ついでにスケベクソジジイ!」

矢吹やぶきさんの扱いがどんどんざつになっていく……」


「何じゃ。いつもと時間が違うような気がするが……って! リザベルちゃんと、この前の可愛らしいお嬢ちゃんじゃないか!」


それに、前回とほぼ同じ台詞セリフ


「2人とも、元気にしとったか? あれからチチは成長したかね?」

「クソジジイ……何て言っているかラムダさんに教えてやりたい」


うわっ。これマジで怒ってる。

とにかく、一刻も早く終わらせなければ。


でよ! ロイ・サドラー!」


よし。いつも通り早いな。


そしていつも通り、特に前触れもなく目の前にロイが現れた。葉緑体の皮膚を持つ、気持ち悪い緑の怪物。その姿は否応いやおうなしに恐怖心をあおり……


って、駄目だ! 戦う前から気持ちで負けるな!


「ロイ・サドラー。久しぶりだな」

「確かに、小さいチチには小さいチチの魅力というものがある。しかし昔から、大は小をねるともいうじゃろ?」


この前みたいな失敗はしない。最初から戦闘態勢だ。


「どうせ言葉は通じないんだろ? ほら。とっととかかってこい」

「こっちのお嬢ちゃんはまだいいんじゃ。これからメスへと成長するしの。しかしリザベルちゃんはもう手遅ておく……」

「◎◇▽▼□〒≒ΠδεЖЙсэшю!」


げっ! マジで訳しやがった!

と思った瞬間、ロイが飛びかかってきた!


「遅いっ!」

「ごはぁっ!」


一直線に俺のドルマゾーラ目掛けて走ってきたロイを、蹴りで迎撃げいげきした。

ちなみに、2番目の声は俺じゃない。ラムダさんに殴られたスケベジジイだ。


しかし、体を反転させ受け身をとったロイは、間髪かんぱつ入れずジャンプして、今度は上空から襲い掛かってきた! 速い! 息もつかせぬ攻撃!


()()()()


ラムダさん(の10パーセント)に比べりゃ、テメェは亀みたいなもんなんだよ!


俺は身をかがめ、ジャンピングアッパーでロイを迎え撃った! 心の中で昇竜拳しょうりゅうけんと叫びながら!


「おおっ! カッコいい! 昇竜拳しょうりゅうけんみたいですね!」


リザベルさん! もっと言ってくれ!

ところで、漫画の真似まねは恥ずかしくて、ゲームの真似まねは恥ずかしくないのか? 


天井に激突し、それから床に叩きつけられたロイ。しかし、俺が放ったのは昇竜拳しょうりゅうけんじゃなくて、それっぽく見せかけただけのジャンピングアッパー。大したダメージは受けてないはずだ。


「起きてこい。死んだふりはもう通用しない」


言葉は通じない。それは分かってる。


「来ないのなら……」


俺の台詞セリフが終わらないうちに、再びロイが飛びかかってきた!

今度はジグザグに、左右にステップしながら近付いてくる!


()()()()んだよ」


狙いは変わらず俺のドルマゾーラだ。

俺は再び身をかがめ、頭を()()()の形に振り始めた。


「ぶふぅっ! いい歳こいて漫画の真似(まね)……」


笑うな。

それと、何でゲームの真似まねは恥ずかしくなくて……じゃない! 

これは決して漫画の真似まねなどではなく、あくまで矢吹正平やぶきしょうへいが最後の世界戦のために編み出した必殺技なんだ!


矢吹やぶきさん、見ていてください! あなたのボクシングが、異世界に通用することを証明してみせます!」

「スケベジジイは気絶してますよー」

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