表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/57

(第022話)幻の必殺技(超有名)

緑の怪物ことロイ・サドラーに敗れてから、俺の心はえていた。

強くなりたい。もっともっと強くなりたい。

強くなって奴を倒せば、念願のお姫様のキスが……はっ!


うう。恥ずかしい。勢い任せで、何てことを言ってしまったんだ。


「必殺技が必要じゃな」


いかん。矢吹やぶきさんに相談している最中だった。

確かに、あの異常なまでの耐久力タフネスを打ち破ることができる技があるとすれば、それはまさに必殺技と呼ぶに相応ふさわしいものだろう。


「現役時代、ワシは世界戦に2度挑戦したが、2度とも負けた。何故だと思う?」

「えっと……相手が悪かったとか」


「それもある。じゃがな。一番の原因はパンチの軽さじゃ」

「パンチが……軽い?」


()()は生まれつきのものでな。練習ではどうにもならん」

「そ……それじゃ、諦めたんですか?」


矢吹やぶきさんはニヤリと笑った。


「何を言うとる。このワシが女とボクシングのことを諦めると思うか?」


うん。この人、たまにカッコいいんだよな。たまーに。


「生来のパンチの弱さという弱点……克服こくふくするべく試行錯誤を繰り返した。そして1つの答えに辿り着いた」


そう言うと、矢吹やぶきさんはファイティングポーズをとり、左右の腕を水平に、弧を描くように振り回した。


「その答えとは……フックじゃ」

「フックって……えっと、こうやって……」


「そう。ワシはそれまで、フックを軽視しておった。ストレートやアッパーに比べて、いまいち使いどころがないと思ってな」


確かにフックは、近付かないと当たらない、ブロックされやすい、カウンターの餌食えじきになりやすい、の三重苦さんじゅうくというイメージだ。


「じゃが、ワシのようなパンチの軽い者は、一撃必殺は狙えん。相手の意識を断ち切るまで攻撃を続ける、連撃必倒(れんげきひっとう)を狙う。そのための武器がフックじゃ。ワシは()()()というときに使うフック主体の連撃の開発を急いだ」

「フック主体の……連撃」


「が、完成したときにはもう40歳になっておってな。そんな年寄りに世界戦を組んでくれる者はおらん。結局、一度もお披露目ひろめせんまま引退したんじゃ」

「ということは……幻の必殺技?」


「そうじゃ。ワシしか知らん、誰も見たことのない技」

「そ……それを教えてもらえるんですか?」


「構えてみよ」

「は、はいっ!」


これは凄いことだ。

元日本バンタム級チャンピオン、矢吹正平やぶきしょうへい。この男が3度目の世界戦に向けて編み出した必殺技。

すで()()()()()()()()()()から、それを直接伝授してもらえるなんて……!


「まずは膝の屈伸」

「こうですか?」


「それから腰のひねり」

「えっと……こう?」


「そうじゃ。飲み込みが早いのう」

「でもこれ、防御テクニックじゃないんですか?」


ダッキングとウェービング。どちらも数えきれないくらい繰り返してきた動きだ。


「その通り。攻防一体こうぼういったいこそ、この技の根幹こんかんをなすものじゃ」

「じゃあ、防御の姿勢から瞬時に()()ことができる――」


矢吹やぶきさんは、肯定の言葉の代わりにニヤリと笑った。


「そして頭を()()()の形に振り――」

「えっ?」


「反動を付けて、左右からフックを――」

「ちょっと待ってください!」


誰も知らない必殺技だって? そんなわけないだろう?


「何じゃ? 質問か?」

「あの……矢吹やぶきさん」


これって、日本で一番有名なボクシング漫画の主人公が使う……


「漫画とか好きですか?」


日本一有名な必殺技じゃないか!


「いや。ワシは漫画よりも()()()でな」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「それって、デンプシー……」

「分かってます! 最後まで言わないでください!」


やはり地球文化マニア。リザベルさんは矢吹やぶきさんの必殺技の()()()を知っていた。


「漫画の技を真似まねするのって、恥ずかしくないですか?」

「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。それに、矢吹やぶきさんが自分で編み出した技ですから、真似まねじゃないです」


そう。真似まねじゃない。

あの漫画の主人公が()()()を始めてお披露目ひろめしたのは1990年代に入ってからで、それは矢吹やぶきさんが亡くなった後だ。

加えて、矢吹やぶきさんは漫画を読まない。使うのはより()()()な写真つきのやつだけだ。何に使うのかは知らないが。


「ま、ラムダさんの必殺技は数ヶ月で習得できるようなものではなさそうですし。いいんじゃないですか? スケベロール」

「せめて矢吹やぶきロールと言ってくださいよ……」


そして次は、ラムダさんの稽古。

緑の怪物に勝つための秘策をさずけてくれるという話だが……


「∠∇∝◎▼□〒≒Πшю@§!!」


うう……何か言ってる。可愛いけど怖い。

やっぱり、弟子みたいな存在の俺が負けたことを怒ってるんだろうか。


コルネリア族の戦士の必殺技……いったい、どんなものなんだろう?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ