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(第018話)悪魔を憐れむ歌

「おっはようございまーす! 新しい朝が来ましたよー!」


いつも通りの朝。昨日のトレーニング内容をリザベルさんに報告したら、次は矢吹やぶきさんとボクシング練習を二時間。そしてラムダさんに三十分稽古をつけてもらい、眠くなるまでトレーニング。いつもの俺のローテ。


だが今日は、ちょっとだけ特別な日だ。




「ラムダさんとの稽古を始めてから、昨日で百日が経過しましたね」

「昨日の多良木たらきさん、燃えてましたね!」


そう。記念すべき百日目ということで、昨日のラムダさんとの稽古はかなり気合を入れてのぞんだ。それで、攻撃を仕掛けた回数の記録は更新できたんだが、カウンターを決められた回数も同時に更新。


それが意味することは、つまり――


「それでも、ラムダさんの体にれることができませんでした」

「うわっ……ロリコン犯罪者」


「そ、そういう意味じゃなくて! 一回も攻撃が当たってないってことですよ!」

「分かってますよー」


くそう。楽しんでるな。


「それで、ちょっと相談したいことがあって」

「何ですか?」


「目標……というか、実感が欲しいです。強くなってるっていう」

「戦闘力測定装置じゃ駄目ですか?」

「数値が伸びるのも嬉しいんですけど、やっぱこう……」


我儘わがままなのは分かってるが、以前の皇帝カイザー戦のような刺激が欲しい。


「つまり、ライバルが欲しいというわけですか?」

「そんなところです。ラムダさんはライバルというには強すぎますし。具体的にいうと、今の俺の1.5倍くらいがいいんです」




そう。贅沢ぜいたくは言わないけど、最初の敵、皇帝カイザーの戦闘力が130で、次に呼び出したラムダさんの戦闘力が168530。どう考えても離れすぎている。

漫画で例えるなら、M字ハゲと完全ハゲをすっ飛ばして、いきなり五十三万の人が地球にやってきたようなものだ。


「コルネリア族でいいなら、ラムダさんの他にも何人か呼び出せますが……」

「えっ? なら――」


「全員、戦闘力五万オーバーなんですよね」

「あ、やっぱいいです」


くそう。何なんだよコルネリア族。コマネチしてるくせに。


「地球人とコルネリア族以外の死者も呼び出せるんですよね?」

「ええ。私が呼べる種類のたましいであれば」


「その中に、俺にちょうどいいくらいの相手はいませんか?」

「うーん。ちょっと待ってくださいね」


リザベルさんは目をせ、しばらく考え込んでいた。たぶん、検索とやらをしているのだろう。




「知的生命じゃなくてもいいなら、けっこういますね」

「えっと……知的生命じゃないなら、どんな生物なんですか?」


「言語を理解できない生物のことです。地球星でいうところの動物ですよ」

「というと、トラとか、ライオンとか?」

「あとは亜人あじんでしょうか。狼男ウェアウルフやリザードマンみたいな感じです」


狼男ウェアウルフにリザードマン。

ずっとSF寄りだったのに、なんか一気にファンタジー感が出たな。


「俺は構いませんけど、何か問題あるんですか?」

「問題というほどのことでもないんですが……空腹じゃないと戦わないんですよ」


ああ。なるほどね。


「死んだら空腹感はないですよね。だから、戦うならこっちから仕掛けるしかないです。皇帝カイザーくんみたいに無意味な攻撃はしてきませんから」


しかしそれだと、安からな眠りについている動物たちを無理やり起こしてこの部屋へ連れ込み、そのうえ喧嘩を吹っ掛けるという鬼畜きちくの所業をすることになる。

死にはしないとはいえ、明らかに動物虐待だ。こっちも気分悪いし。


「あとはサイズの問題ですね。この部屋の中で自由に動き回れるサイズで、多良木たらきさんの1.5倍となると、かなり限られてきます」


つまり、象や熊みたいな大きさの生物では駄目だってことか。


「けっこう難しいんですね」

「難しいですよ」


うーん。猫型ロボットのようにポンポン出してくれるものだと思ったが……




「あ、けど……」

「いるんですか?」


「いるんですけど、ちょっと微妙びみょうなんですよ」

微妙びみょう?」


微妙びみょうといえば、皇帝カイザーも十分すぎるくらい微妙びみょうだった。

リザベルさんがそう言うってことは、よほどおかしな奴なんだろうか。


「えっと……悪魔あくまっていうのがいまして」

悪魔あくま? 悪魔あくまって……あの悪魔あくまですか?」

「いえ。地球星人が考える悪魔あくまとは全然違います。簡単にいえば、生殖能力がない知的生命のことです。その代わり寿命は超長いですけど」


「寿命が長いと、何か問題があるんですか?」

「はい。知的生命は寿命が長すぎると、なんか《《おかしく》》なっちゃうんですよ」


あ。今のは凄くイメージしやすかった。だってそれって……


「もし俺が443.2574年この部屋に閉じ込められてたら、その悪魔あくまとやらになってたんでしょうか?」

「443.2574年くらいなら大丈夫ですよ。数千万年とか、数億年とか、それくらいじゃないと」


数千万年、数億年を生きた知的生命。

よく分からないが、発狂程度では済まないということだろうか。想像すると怖い。


「どうしましょう? 一応、検索してみます?」

「え? そ、そうですね……」


とりあえず、やめといた方がいいような気がする。リザベルも微妙びみょうだって言ってるし。なんか怖いし。


「いますね。やっぱり」


あれっ? 検索した? 

()()()()()っていうのは、()()()()()のつもりで言ったのに。日本語って難しい。


まあ、検索するだけなら問題ないか。検索するだけなら。

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