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08. 仮説

「こちら2班、異能力者組織『リバーサイダーズ』の掃討が完了しました」


「よしよし。3班の方に合流してくれ。そっちはまだ抵抗が激しいらしい」


作戦は概ね予定通り、唯一の不安点は『畜生道』を名乗る異能力者組織。第4班とかち合ったのが、一番の問題点。伊佐波碧は今回の作戦ではまだ試運転の予定だったのだが、そうもいかないらしい。

人魚姫が一度活動したものの、暴走している様子はない。伊佐波碧がいる限り、人魚姫は彼の守護に徹するらしい。これは朗報だ。運用についても考えやすい。


「うまくいってるか?」

会議室のドアが予定外に開いた。入ってきたのは


「御剣さん!」


神異庁異能力対策局局長、御剣刀子(みつるぎとうこ)。波瀬ヶ崎の直属の上司である。


「体調の方は平気なんですか?」


「あぁ今は悪くない。お前に異能力対策局をまかせっきりにしてしまっているのでな。様子を見に来た」


「作戦は順調です。一つだけ予定外の組織が発見されましたが、それ以外は問題ありません」


「その組織ってのは?」


「畜生道を名乗っているそうです。あちらから4班にしかけてきたそうですが、返り討ちにしています」


「ふぅん…。作戦がどこかから漏れているわけか」

御剣刀子は何かを考えるように部屋をうろつき、一周したところで止まった。


「まぁ作戦が漏れることは無いことではない。これだけ大きな組織なら裏切り者の一人や二人いてもおかしくはない。だが4班にぶつけるだろうか」


「…というと」


「2班、3班も勿論手練れだが、4班には伊佐波碧がいるんだろ?伊佐波がトリガーで人魚姫が動き出す以上、どんな組織をぶつけても皆殺しにされるのがオチだ。わざわざ4班と戦わせるということは、何かしら勝つ算段があるんじゃないか」


「なるほど…」

流石、異能力対策局局長。楽観的な私とは違い、念には念を入れるタイプだ。

根拠のない推理だが、妙に納得できる。もし、伊佐波碧に対抗しうる手段を持っているなら、そこに碧を送るのはあまりにも危険すぎる。

だが、この戦いはただ勝利すればいいわけではない。伊佐波碧の運用が安全で、有益なものであることを証明しなければ、所詮課長に過ぎない私は簡単に彼を取り上げられてしまう。


課長などという立場に甘んじるつもりは毛頭ない。会議の時、私は彼に自分の昇進を託したのだ。いまさら彼を手放すわけにはいかない。


「御剣局長、指揮を代わってもらうことはできますか」


「あぁ可能だよ。しかしどうするつもりだね」


「私が直々に行きます。川俣、1班に連絡しろ」





「しかし…本当にこっちであっているのか?」


「作戦ではこちらに向かうようになってます。畜生道は作戦に含まれていませんから、監察局から何か情報がくるのを待つしかないですね」


「こうも退屈だと困っちゃうなぁ。折角病院から出てきたというのに」


(勝手に来たのに…なんだこの人は)


その時、僕に支給された携帯に着信があった。予想外のことで驚いてしまう。


「も、もしもし。異能力対策局特別対策課第4班、伊佐波碧です!」


「君は…?あぁ新入りか!いや、誰でもいい!そっちは今どこにいる?」


「ええと、作戦で指定された地点に向かってます。場所は…」


「B地点よ」


「B地点です!」


「OK。俺も今からそっちに向かう!黒条さんに伝えてくれ。なるはやできてくれって」


自分の要件を言い終わると、電話はさっさと切れてしまった。


「綾華さん。なるはやでいった方がいいみたいです」


「電話の相手は?」


「分かりません」


「まぁ多分風見さんでしょう。道渡さんは死んだけど、あの人はまだ生きてたのね。急ぐわよ」


「風見か。あいつが助けを求めるとは相当だな。よしさっさと助けて、俺の復活を知らせてやろう!」





電話をしたのはいいが、この状況から逃げられるかどうか…


「逃げ足が早いねぇ。神異庁!」


「神異庁かどうかは関係ねぇよ」


無数の蛇がこちらに伸びてくる。きっと毒があるだろう。


「突風!」

風で蛇を吹き飛ばす。俺の能力で対応できるのが不幸中の幸いだ。


攻撃をしてきたのは、頭から蛇の生えた女。道渡を殺した奴らの仲間だろう。


「あいつを殺したときは逃げたらしいじゃない。私からも逃げるの?」


「俺は戦えるやつとしか、戦わない。死んだら元も子もないからな」


「じゃあ私からも逃げるのかしらぁ?」


再び頭に生えた蛇たちが伸び、こちらに向かってくる。


「いや、お前には勝てるさ」


俺の能力は風を吹かせるわけではない。風を細くし、最大出力で撃てば、銃弾にも勝る威力になる。


「銃風」

局所的に風が吹いた。その風の行く先は一つ、頭から蛇の生えた女、蛇尾の頭。


パンッ


蛇尾の額に風穴が開いた。頭から生えた蛇たちも元を断たれて息絶えてしまった。


「こんな雑魚がいつも相手だったら楽なんだけどな…」


空に大きな翼が滑空している。道渡を殺したやつだ。


「おーい!仲間が死んだぞ!いつまでそこから見てるんだ!」

…来る!


空を飛んでいた翼が急降下でこちらに向かってくる。それに合わせて、風見は自分の身体に思い切り風をぶつけた。成人男性が吹き飛ぶほどの風に乗って、風見は飛翔した。


先ほどまで風見がいたところに、鷹村は着地する。

「チッ避けたか」


この技は本来使いたくはない。俺の能力は、風を吹かせることこそできるが、精密制御はそこまで得意ではない。飛ぶことはできるが、この高さまで飛んだら着地するときに足を挫くのは免れない。なんなら骨折する。


「追いついてみろよ!俺が仲間と合流したら、負けなしだぞ!俺の仲間は強いからな!!」


カスが…。まぁいい。やつを逃がすのは予定通り、そのまま仲間と合流しろ。その時がお前らの終わりだ。




さぁおいで…家族に会いたいんだろ。あいつらを殺すのがお前の仕事だ。



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