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設定話ついでのその後①魔女裁判の仕掛け の続きの続き

 アンドレアスは、三年前に死んでいた女が生きている、と言い出した。

 すると、アエミリアを追っていた軍人が異議を唱える。


「だが、ちょっと待て?レネーも彼女の妹も三年前に死んでいたはずだ。俺は遺体を見た覚えがあるぞ」


「身元不明の数だけ合っている遺体だろ。軍は死体の数が合えばそれで終いだ。だが、僕達は遺体を家族の元に戻す仕事をしなければいけない。僕は当時の犠牲者と思える人物全ての書類を探り、遺体と情報を突き合わせたんだよ。身元確認のためにね。その時にレネーが娘を十八歳の時に生んでたって証言と書類を見つけた。そして、彼女達の遺体が無い事も確認したよ」


「その情報がどうしてこっちに回って来なかった?」


「軍人に市内を掻きまわして欲しくはないからだ」


 ユリウスはアンドレアスの言い分に少佐がさらに激高すると思ったが、少佐は初めてという風に同僚めいた風にして、そうか、と頷いただけである。


「そうか。で、逃げた二人が学園に潜り込めたどころか、妹の方が再び聖女候補生なんて悪夢みたいな事が出来たのは、一体どういうことだ?」


「レネーの写し絵能力によるものかな」


 アンドレアスは言うや、ジャケットのポケットに右手を入れた。

 それから、手品が始まるようにして、ポケットに入れていたらしい折りたたまれた手紙を取り出して、ユリウス達にそれを開いて見せたのである。


「そんな手紙を貰ったら、俺は相手を殴りますね。それで聖女は逆上してしまったのですか?それでレネーがアエミリアを呼び出したりと暗躍し始めた?」


「ばあか、ユリウス。君は一を聞いて十を知った気でいるけどね、僕が提示したものは三かもしれないし、マイナス一かも知れないんだぞ」


「すいません。それで、その、君のひとりよがりの行動には辟易している。で、あなたは僕達に何を提示して下さっているので?」


「レネーは恐らく、自分の写し絵魔法を悪用する事を思い付いた。写し絵魔法で書類の必要な部分だけコピーして、彼女が望む書類に書き換えてしまえば、身元証明など彼女の思いのままだ。三年前に死んでいたはずの少女を、再び聖女候補生として学園に押し込んでしまうなんて朝飯前だった事だろうな。これはそんな偽造ができるって証拠さ」


 ユリウス達生徒会メンバーは、え?と同時に声を上げていた。

 アンドレアスは、不思議だねえ、と嬉しそうに微笑みながら持っていた紙をテーブルに放ると、今度は左手で左のポケットを探る。

 彼は左のポケットから同じようなものを取り出すと、やはり同じように紙を開いてユリウス達に見せつけた。


「君に気持ちを伝えたい。昼休み、出会った場所に来てくれ。俺に会いたくない気持ちはわかる。わかるが、閉じこもってしまった君のひとりよがりの行動には辟易している。いい加減にしてくれないか。俺と会って、俺の気持を台無しにするか受け取るか、どちらかはっきりしてくれ」


「ハハハ。ちょいと女々しいが、懇願が偉そうな所が見どころがある。そして、この可愛いお手紙は僕の妹が受け取るはずのものだった。妹にはこの仕返しをする場を与えねばならない。そう思わないかな?」


「銀狐が。妹までも罠に使うのか?三年前に彼らを逃がすことになったのは、聖女の閃光で町の一角が破壊されたからだ。君はその被害のさまを知っている。それなのにその危険に大事な妹やらをさらすのか?」


「君は僕の妹を知らない。僕はみんなに妹を紹介したい。あの子はね、追い詰められるととっても楽しい行動を取ってくれるんだよ」


「確かに。笑わせて貰ったな」


 アンドレアスが不穏な目で少佐を睨んだが、彼は目的があるのだからという風に再び作り笑顔になると、円卓の生徒会メンバーの顔を見回す。


「いいかな皆さん。聖女がヴェルナーとやらに固執しているという事で、妹と彼の婚約の噂を学園に流してください。正式発表は今日の夕方。その時に大事な秘密も公表されるだろうってね。そうすりゃ、楽しいお昼時間がパーティタイムになる」


「大丈夫なんですか?妹御が誤解した奴らに暴力を受けたりしませんか?」


「わお。マルク君。君は最高だ。では君が進行役。ガタイの良いお兄さん達も取り巻きで連れて行ってね。そいつらがいることでイキったバカが妹に突撃することをけん制できる」


 ユリウスはマルクが歯を食いしばった所を見て、自分がやると手を挙げていた。

 マルクが女子に絶対に手をあげられないどころか、目の前で誰かが責められるのを見ることさえ我慢できない真っ当な男だと、ユリウスは知っているからだ。


「却下」

「君は駄目だよ」


 ユリウスはアンドレアスだけでなく、アンドレアスを嫌っていることを隠そうともしない少佐にまで否定された事が納得できなかった。


「なんでです?俺がやりますよ」


「マルク君はこっちの仕事を目指している。場数を踏ませたい」

「そんなの、君がやったら自分の好みで決めたって風になるでしょ。駄目」


「俺、本気で人を見る目無いですね。俺は少佐の方が人間味あると思ってたけど、アンドレアスさんの方こそでした。俺は絶対軍行きませんからって、やめてください。アンドレアスさん!!」


「失言したら教育的指導でしょう」


「俺は褒めましたよね!!って、本気でやめて!!」

次話はヴェルナーさんです

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