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05 帰投


 やたらと元気な声の主は、イヴラシュカ様!


 じゃないな、今は、イヴラシュカさん。



 つまりは、女王様から勘当されて放逐の身となったノラ王女、


 失礼、流浪の元王女様。


 今回の、王印までも持ち出しての目に余るどころでは無いやりたい放題、


 これがけじめ、かな。



 そしてなぜか、俺たちの帰りの幌馬車旅に同行しております。


 例の迷宮での大冒険で、うちの乙女冒険者たちとすっかり意気投合しちゃったそうで。


 いや、ちゃっかり、だな。


 するりとシブマ1号に潜り込んでいるところなど、まさにちゃっかり。



 うちの乙女たちの様子は、何故かいつもと変わらず。


 メネルカ出国の際の、あの微妙な表情は、今は全く無い。


 むしろ、イヴラシュカさんと同行出来ることを喜んでおりますよ。



 分からん。


 危険は全く無かったとは言え、迷宮探索を共にした絆、なのか。


 本当に分からん。


 俺が乙女心を理解できぬ朴念仁だから、なのだろうか。



 なんと言いますか、乙女たちの屈託の無い和気あいあいっぷりを見ていたら、


 これ以上悩むのが馬鹿らしくなった事だけは、事実。


 それにしてもイヴラシュカさん、国を出られた事を喜んでいるようにしか見えないのですが。



「こうなってしまった事を悔やむより、いま何が出来るのかを探しましょう」


 前向き思考ですね。


 出来ればその前向きなところを、自分のわがままを叶える以外の方向に向けるべきでしたね。



 先程アイネさんが、全ての事情をロイさんたちに連絡していました。


 こちらへ向かう旅支度におおわらわだったあちらの皆さん、もちろん驚いていましたが、


 何よりもこちらの皆が無事だったことを喜んでおりました。


 なぜか騒動の元となった元王女様が同行している件については、戻ってきてからじっくり考えましょうと、ロイさん、かなりお疲れのご様子。


 俺もほとほと疲れましたよ、ロイさん。




 道中、やたらと話しかけてくるイヴラシュカさんからいろいろ聞けました。


 まずは迷宮内から届いていたアイネさんたちの手紙の件。


 皆に聞いてみると、同じ内容の手紙など出した覚えは無い、とのこと。



「速達コウモリに、少々いたずらを……」


 おっと、それはいたずらでは済まされませんよ、イヴラシュカさん。



 迷宮内との手紙のやりとりに使われていたのは、速達鳥ならぬ速達コウモリ、


 それを魔法で眠らせちゃって、手紙を盗み見ていたとか。


 いや、そういう事をされないために、超強力な防御魔導具で守られているはずですよ、速達コウモリ。


 確かに、魔法に関しては噂通りの実力をお持ちのようですね、イヴラシュカさん。


 やはり問題は、倫理面ですか。



 で、自分に都合の悪い情報を流出させないように、


 速達コウモリが飛ぶたびにアレしちゃってたそうですが、


 あの時はうっかり、読む前の手紙を破損だか紛失だかしてしまったそうで、


 前回の内容が挨拶程度だったので今回も同内容で、


 という雑な処理が命取り。


 偶然と言いますか油断と言いますか。


 もしそれが無かったら、今頃は迷宮制覇していたのでしょうか。



 ひょっとして、俺からの手紙が取り継ぎ禁止されていたのも?


「ごめんなさい」


 なるほど、それがちまたで話題のてへぺろ。


 じゃなくて、いや、なんと言いますか、


 イヴラシュカさんの場合はわがままとかじゃ無くて、


 人が生きる上で大切であろう常識的な事を、遵守する気がまるで無し。



 教育役、どなたが担当するのでしょうか。


 俺は絶対に無理ですよ。


 可能性が一番高いであろうロイさん、


 大変でしょうが頑張ってください。



 無責任では無いのです。


 責任の重さを痛感すればこその、勇気ある撤退行為。


 つまりは、これ以上乙女嵐の風速が上がったら、


 俺なんて明後日の方向へ吹っ飛ばされちゃいますって。



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