03 真実
今、この場にいるのは、
アイネさん、シジミさん、マユリさん、ハルミスタさん、
俺とミナモ、
ヴェルネッサさんと、
いかにも魔法使いっぽい衣装の娘さん。
アイネさんと同い歳くらいのその娘さんは、物凄く縮こまっちゃってます。
「この度はこちらのイヴラシュカが大変なご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げたヴェルネッサさんを見て、隣にいた娘さんも慌てて頭を下げた。
この娘さんが、王女イヴラシュカ様、かな。
「皆の前で、全ての事情と経緯の説明、お願いします」
俺の言葉に、場の緊張が増すのを感じる。
正直早く帰りたかったが、事実を全て知らずして、ツァイシャ女王様の元へは戻れまい。
以降はヴェルネッサさんのお話し。
イヴラシュカ様は現女王フィルミオラ様の娘。
実は、女王の娘ではあるが身分としては王女では無いと後から聞いたが、
メネルカ特有の慣習など俺には全く分からんので、
非礼でなければ王女扱いで良かろう。
幼い頃から魔法の才能を開花させた天才肌の魔法使いであるイヴラシュカ様。
次期女王との呼び声も(一部では)高かったが、この国の女王となれるのは世襲では無く実力主義。
女王候補となるためには、成人の儀を迎えた後、選定の儀の迷宮を実力で踏破せねばならぬ。
選定の儀にて試されるのは、知力と魔力と統率力。
信頼できる仲間と共に、迷宮の謎を、魔法で踏破すべし。
そしてイヴラシュカ様、
魔力はある。
幼き頃よりその才を磨いてきた自慢の魔法力。
知恵はある。
幼き頃より女王の娘として恥ずかしく無いよう学んできた学問・礼法・高貴なる者の嗜み。
仲間は……いなかった。
幼き頃よりの振る舞いに問題あり。
ゆえに、人望、まるで無し。
身近には、選定の儀の迷宮踏破に付き合ってくれそうな娘たちは皆無。
で、イヴラシュカ様、悪だくみ。
選定の儀の内容は、関係者以外には秘密である事、
幼い頃に会ったきりだが、ツァイシャ女王様からはとても可愛がってもらった事、
そして考えたのが、今回のコレ。
噂に名高いエルサニアの冒険者たちをツァイシャ女王様に紹介してもらおう作戦。
エルサニア側には女王候補選定の儀である事を隠して、
メネルカ側にはツァイシャ女王様は委細御承知だと嘘をついて。
全てイヴラシュカ様おひとりでの企み事。
で、上手いことたぶらかした冒険者たちと選定の儀の迷宮踏破中のところを呼び戻されて大目玉、と。
説明が終わって、一同、無言。
つまり、鍵がどうとかは全くの嘘。
アイネさんたちは、とても微妙な表情。
さもありなん。
よくもまあ、ツァイシャ女王様やヴェルネッサさんたちにバレずにいられたものだと、少々感心。
まあ、何はともあれ一件落着。
事情は理解出来ましたので、俺たちはこれにて失礼。
「お待ちを」
ヴェルネッサさんから呼び止められたが、
これ以上の厄介事は、勘弁至極。
しかし、事を収めるためとはいえ特使任命証を振りかざしたのは俺自身。
今は用心棒では無く特使として振る舞わねばならぬ。
柄にも無い事などするからこんな羽目になると、
今はただ大人しくかしこまるばかりの、俺。