15 その先
あれからいろいろありまして、
ジオーネでの道場の件は『平和の館』と呼ばれる立派な建物での各種セミナーという形で実現しました。
モノカ邸にてマクラさんたちが講師の先生方から受けていた授業、
それをアレンジしたものを、不定期ながらもジオーネでも開催しております。
講師の皆さんはそれぞれがお忙しい中、頑張っておられます。
もちろんミナモ先生の東方流護身術講座も大人気。
一流講師からの各種の学びに、自警団女性陣の実力、めきめきと上昇中。
そして女房恋人がやたらと強くなっちゃった事をジオーネの男衆から愚痴られるのは、なぜか俺。
いや、講師の先生と暮らしている俺こそが、
あなた方とは比べ物にならん程の常在戦場の毎日なのですよ、
などと愚痴り返すことも出来ず……
それら諸々は、日が経つにつれて更なる段階へと進む。
セミナーの噂は各地へと広がっていき、
エルサニアのツァイシャ女王様やヴェルクリの領主バルモルトさんのお耳へと届き、
ぜひこちらでもセミナー開催を、となるのは必然だったかと。
おかげで講師の先生方、少々無謀と心配な程の多忙な毎日。
冒険者としての活動との二足の草鞋は大変でしょうが、
お弟子さん的な生徒さんたちもぐんぐん成長しているそうなので、
すぐにまた新たな段階へと進むことでしょう。
俺は……相変わらずです。
用心棒の冒険者、
お呼ばれすれば助っ人に、
普段はぶらり居候。
ただし油断は禁物、刺客には御用心。
あの暴れん坊元王女様ことイヴラシュカさん、
心配されていたわがまま気ままな行動は影を潜めて、
周囲の信頼も厚い立派なメイドさんとして御活躍の毎日だとか。
それは誠に喜ばしい事なのですが、
なぜかお休みの日には必ず我が家へ来襲し、
全力で俺をイジり倒す事に余念無し。
つまりは、あいも変わらずの無敵乙女っぷり。
なぜか見て見ぬふりの嫁と嫁候補たちに助けを求めるのは諦めて、
大人の男をからかってはいかんよと直接言ってはみるものの、
所詮俺は人見知りの愚鈍堅物、どう足掻いても口では勝てぬ。
いかんぞ、俺。
安らぎの我が家を取り戻すためにも、早急に手を打たねばなるまい。
いかに『人こそ宝』と言えども、俺の我慢にも限度がある。
性根を入れ替えたアレが元々備わっていた才媛っぷりを発揮してるとはいえ、
俺に対する絡みぐせが治らないのでは話にならぬ。
あえて言おう、天敵である、と!
ぽかり
痛っ
なんだよミナモ、せっかくアレが来てない平和な日だし、たまのふたりきりなんだからもっと安らぎを……
「そろそろ覚悟を決めないと、ヴェルネッサさんが痺れを切らして飛んできますよ」
覚悟とかヴェルネッサさんとか、わけ分からん。
いいよもう。
俺、今日はふて寝するって決めたから。
もちろん、目指すはミナモのひざ枕……