12 神輿
こんにちは、カミスさん。
今日は、安定して家族を支え続ける秘訣について、相談に伺いました。
「こんにちは、シナギさん」
「僕の場合は、みんなから支えられている側だと思うんですけど」
そんなことないですって、素敵な家族も増えちゃって、ますます絶好調じゃないですか、師匠。
「確かにアシュトさんご家族は素敵ですけど、って、師匠はやめてくださいよぅ」
いえいえ、カミスさんの教えを守っていればこそ、今の俺があるのです。
つまり、俺の人生の、師匠、なのです。
「教えって何です?」
『お互いが相手のことを深く知るための準備期間』として、共に暮らす相手に真摯かつ紳士に寄り添う姿勢、です。
「うひゃぁ、なんでみんながそれを知ってるんですかっ」
当たり前なのです、素晴らしい教えというものは、誰の手を煩わせずとも自然と広まっていくものなのですよ。
「勘弁してくださいよぅ」
無理やり広めようとする変な宗教の教えなんかと違って、素晴らしい規範として皆が自主的に見習っている行動なのです。
いかにカミスさんといえども、もう止められませんよ。
「もうそれはそれで良いですけど、僕が支えられる側だって事実は変わりませんからね」
もちろんですとも、素晴らしい神輿ほど、担ぎ上げたくなるものなのです。
「せめて人間扱いしてくださいよぅ」
誰よりも人間らしいところも、カミスさんの魅力のひとつなのですよ。
「なんだか、わけ分かんなくなっちゃったよ」
正直、俺もです。
やっぱり凄いよな、カミスさん。
あんなに若いのに、拝みたくなるっていうか、担ぎたくなるっていうか。
人としての魅力って、年齢を超越しちゃうって事なのかな。
もちろん、少々やり過ぎたようなので、きちんと謝罪しましたとも。
まあ、俺の場合は、分かってくれる人が分かってくれればいいやって感じで。
という事で、お次は……
そろそろ帰ろうかな。