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01 用心棒

『リヴァイス 37 特使公爵と多勢に無勢な騒動記』の続きで、


『若先生』シナギのお話しです。


 お楽しみいただければ幸いです。




 俺の名はシナギ。


 職業、用心棒的冒険者。


 今まさに依頼を受けた冒険者として、はるか北方のメネルカ魔導国へと遠征中。


 ただし、メネルカは男性入国禁止とのことで俺は入国を許されず、一番近くの街ニーケの宿屋にて仲間たちが戻るまで待機中。



「……」


 妻のミナモが、じっと見つめてくる。


 同じく用心棒的冒険者としてこの旅に同行したミナモは、魔法力不足とやらでメネルカに入国出来ず、俺と共に宿屋にて長期待機中。


 あの眼差し、かなりいろいろと溜まっている様子。


 ……爆発しませんように。




 アイネさんたちがメネルカに入国してからも、報告の手紙は届いている。


『メネルカでは、国全体に張られている結界のせいで、通信魔導具では連絡が取れないんです』

『それに今回の依頼では、一度迷宮に入ると簡単には出られないそうです』

『手紙での連絡をまめに取り合うようにしましょうね』


 メネルカに入国する際にアイネさんが言った言葉。


 しかしなぜか俺からの手紙は取り継いでもらえず、先方から受け取るのみ。


 進捗状況や挨拶的なものなど、送られてくる手紙の内容に不審な点は無かったのだが、



 今日届いた手紙に異変あり。


 前回とほぼ同じ内容のものが届いたのだ。



『ひとつだけ注意していてください』

『手紙の内容は、必ず毎回変えるようにします』

『もし同じ内容の手紙が三通続いたら、緊急事態なのでみんなへの連絡、お願いします』


 この連絡方法は、アイネさんと父ロイさんが以前から決めていた緊急事態への対処法のひとつとのこと。


 何らかの手段で自由を奪われている場合の、仲間に気付いてもらうための秘密の連絡方法。


 もし次に届く手紙も同じならば……



「待ちますか」


 ミナモが、見つめてくる。



 三通目を待つか、今、動くか。


 もしアイネさんたちに何事かが起きているなら、すぐにでも動かねば。


 いや、約束通り、三通目の手紙を待つべきなのか。



 ……うん、俺らしくないよな。


 仲間の危機の可能性がカケラでもあるならば、迷って対処が遅れるよりも、先走って迷惑掛ける方がマシってもんだろ。



「出るぞ、ミナモ」


 俺の声に、待ち続けてご機嫌斜めだったミナモ、いつにも増してのきりり顔。



 手早く撤収支度して、宿の受け付けへ。


 宿屋の一人娘サキさんに急な出立を詫びて、今日までの分の精算をお願いする。



「またのお越しを、心よりお待ちしております」


 北方料理、とても美味かったです。


 にこりと微笑んでくれたサキさんに別れを告げて、一路メネルカを目指す。




 ニーケの街からメネルカへは、徒歩にて数時間。


 その間に、通信魔導具にてロイさんへ連絡。


 手紙の異変の事、


 三通目を待たずに動くと決めた事、



 ロイさんからは、くれぐれも慎重にとの言葉。


 アイネさんたちは必ず無事に連れ帰りますと約束。


 長い待機にて緩んでいた自分に、今一度、喝を入れる。




 俺たちが暮らしているエルサニア王国からはるか北方に位置するこのメネルカ魔導国。


 残念ながら『転送』での行き来は不可。


 俺たちが自由な『転送』を許可されているのは、エルサニア及びその同盟国のみ、だそうだ。


 メネルカ魔導国のような北方諸国は、残念ながら対応範囲外。


 普段『転送』でお世話になっている魔導車『システマ』で可能な限り近くまで送ってもらい、そこからシブマ1号での幌馬車旅でようやくここに辿り着いた。


 先程連絡した際、ロイさんたちも準備が整い次第こちらに出発するとのことだったが、いかんせんメネルカ到着まで幾日掛かるか。



 いまアイネさんたちをフォロー出来るのは、俺とミナモのふたりだけ。


 俺の本分は用心棒である事、あらためて肝に命じる。


 気合い入れろよ、俺。



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