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大人目線

作者: みいも

 晴れた日の午後、久しぶりに散歩をする。

 下校中の小学生が目に入る。

 十人ほどで集団下校する姿。

 懐かしい。

 黄色い帽子に黄色いランドセルカバー。

 新一年生だろう。

 前後には大人が付いている。

 教員か、保護者だろう。

 新一年生が慣れるくらいまで見かける。

 だが、車を運転していると春夏秋冬問わず、保護者付きで集団下校する子どもたちを見るような気もする。

 この光景を目にするようになったのは、何年くらい前からだろう?

 私の住む地域だけだろうか。

 自分が小学生の頃は、集団下校なんてのは土曜日の午前授業が終わった後に登校班で下校するだけだった気がする。それも「第二土曜日」という感じで決められた日だけ。

 あとは一年生の最初だけ。


 物騒な事件が増えたからだろうか。

 近くに居ただけで不審者、声をかけただけ不審者。登下校する小学生に会っても挨拶する事にびくびくしてしまう。

 挨拶前に一言添えないとなんだか怖い。

「あ、そこの家の者だから大丈夫ですよ!おはようございます」「不審者じゃないので大丈夫ですよ!こんにちは」

 実際にはこんな挨拶はしたことは無いけれど。

 たまに小学生の方から元気に挨拶してくれることもある。そういう姿を見ると「ちゃんと教育を受けているのだなぁ」と、心がもきゅもきゅする。

 実は私は高学年くらいまで、登校時に挨拶の出来ないクソガキだった。

 理由は、

「声を出すのが恥ずかしかった」からである。

 情けない理由である。

 きっと旗振り担当の保護者たちからも「挨拶のできないバカな子」と思われていたと思う。

 恥ずかしい限りである。

 大人になった今はもちろん問題なく挨拶する。

 愛想も振りまく。


 低学年の子どもの集団下校はいいことだと思う。

 集団でなくても、誰かと下校する方が安全だ。

 というのも、私が小学校一、二年くらいの頃に同じ方向に帰る子が居なかったある日のこと。

 夏場の午後3時くらいだったと思う。

 私は一人で下校していた。特に何も考えていなかった。私の進行方向には信号があり、信号まで十数メートルくらいの所で信号が赤に変わったのを確認した時だった。

 見知らぬ男性が、笑顔で手を振ってくるではないか。

 そこは見通しのいい交差点で、私は西から、男性は南側から歩いて来るところだった。

 私は「え?誰??」と思いながら、手を少し上げ、でも手は振らず会釈した。

 一瞬私の方に寄って来る素振りがあったが、男性は爽やかな笑顔で私を見ながら、青になっている信号を渡り行ってしまった。

 誰だったのだろう?赤信号で立ち止まり、男性の後ろ姿を見ていた私の所に、小学校での縦割り班が一緒の高学年の子が駆け寄って来た。

「あの人知り合いなの?!」

「…知らない人」

「大丈夫?何もされなかった??」

「うん」

「気をつけなね」

 一緒に居たその子の友人からも「最近変な人多いから、本当に気をつけな!歌を唄いながら近づいてきたり、自転車で追ってきたりする人がいるから」というようなことを言われた気がする。


 当時、私の地域には不審者扱いされている人がたくさんいた。

 某アニメの主題歌を歌いながら近づいて来るおじさん。自転車に乗りながら近づいて来るおじさん。女性の服を着ているおじさん。とある公園で小学生に声をかけて来るおじさん。

 私はどれも見たことがなかった。なのでよく分からない。

 何故おじさんばかりなのかも謎だ。


 他にも、神隠しの話なども耳にする事があった。

 どこからそんな話が湧いて出たのか。

 地元でそういった事は起きていないのに。


 あと、何故かよく分からないけど、同級生の間では不審者に会ったことを自慢し合う会話が聞かれていた。「私昨日あのおじさん見た!」「俺も会った!」

「は?」である。危険な事なのになんで楽しそうに笑いながら話しているのか謎だった。

「不審者に会った私すごいだろ?」みたいなものが心のどこかにあるからだと思うが、それに触発されて不審者を探そうとする子がいたりもした。怖いことだ。


 楽しそうにしている小学生を見たことで、ちょっと嫌だったことを思い出し、動悸に襲われるとは思わなかった。

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