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急展開 〜九条真紀視点〜

「こんにちは。」


私は侑士さんの家を訪れていた。


森田さんが帰った後、侑士さんに薬を盛って眠っていただき、一足先に私達の家へと運んだ。


「あら、こんにちは。貴方は確か侑士君の後輩の子だったかしら。」


家から出てきたのは侑士さんのお母様だった。


「はい、九条真紀と申します。」


侑士さんの家には何度か尋ねたことがあるので侑士さんのお母様とも面識がある。


「確か今日は貴方のお宅に侑士君はお邪魔していたと思うのだけれど。彼はどうしたの?」


彼女が尋ねてきたのでアルバイトのことについて話す。


「侑士さんは家でお待ちいただいています。今日は侑士さんのアルバイトのことについてお話に上がったのですが。」


「そうなの。とりあえず上がって。」


と言われたのでお家にお邪魔することにした。


「それで侑士君のアルバイトのことだったわね。」




席に着いてお茶菓子を出してもらった後、彼女が話を切り出した。


「はい、侑士さんが私の家でアルバイトをする事はご存知ですか?」


「ええ、聞いているわ。」


「それで侑士さんには住み込みで働いてもらおうと思っているのですが?」


「えっ?ちょ、ちょっと待って。住み込み!?どういう事?」


「そのままの意味ですわ。彼がアルバイトをしている期間、私達の家に住み込みで働いて貰いたいのですわ。」


「なぜ?別に住み込みで働く必要ないはずでしょ?」


「私の家からここまではそれなりに距離がありますし、彼から聞いたところによると、そこまで時間も取れないとのことでしたから。それならば住み込みで働いてもらおうと思ったのですわ。彼からは了承も貰っておりますわ。(事後承諾になりますが)」


「た、確かにそうかもしれないわね。でも、私達は家族だわ。そう簡単に離れて暮らすことを了承なんてできないわ。」


「ふふっ、おかしなことを言われるのですね。家族ならば辛い時も助け合うはずですわ。それを貴方達はしましたか?していないでしょう!彼を傷つけただけ。それだけでは足りず、今も彼と向き合おうとしない。彼が何故アルバイトをしたいか考えた事はありますか?」


「社会勉強のためでしょ?」


「違いますわ。それすら知らないのによくも家族と名乗れましたわね。彼の言葉を鵜呑みにして、本質を見ようとしない。いいですか?あくまで私の想像ですが、彼は一刻も早くこの家から離れたかったからアルバイトをしようとしているのですわ。貴方達にこれ以上迷惑はかけられないと。」


「そ、そんな!?私は彼のことを迷惑なんて思った事はないわ!それに想像でしょ?」


「彼にはそう考えていると思いますわ。表面上しか見ない貴方と違って私はしっかりと彼のことを見ていますもの。」


「そんな……………」


「それで彼の住み込みを許可していただけますか?」


「…………………………、それが本当に彼が望んでいることなのね?」


「ええ、そうですわ。」


「…………、わかりました。彼の事、よろしくお願いします。」


「あら、よろしいんですか?」


「…彼の幸せのためです。彼が本当に望んでいるなら否はありません。彼の事を理解できず、傷つけてしまった私は母親と見られていないかもしれませんが、それでも彼の幸せを願っているのは本心です。彼にどう思われていようとも彼は大切な私の子供ですから。ただし、土日は会わせていただけませんか?」


「わかりましたわ。それではこれで失礼しますわ。」


「ありがとうございました、侑士君の本心を教えてくれて。」


「いえ、いいんですわ。」


そうして侑士さんの家を出た。


彼女はどうやら彼のことを思っているのだけは本心らしい。けれど彼の心を理解する事はできなかった結果、見守るということしか出来なかった。


それでは彼を救う事はできない。彼には決して傷つかない環境と、溺れるほどの愛情が必要だ。


私達がそれを与えられるかはわからない。それでも、私達は彼のために何としてでも成し遂げるだけだ。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] まあ元々お嬢様達、計画してた作戦、動き有ったんで前倒しかな。 主人公には保護者から許可得た。 保護者には本人の意思で、上手くごまかし、時間を稼ぐか。 下手に擦り合わせさせずなあなあで。…
[良い点] 義母が人間味があった点。心理学を修めてないだろうし、専用のセミナーは日本には少ないから、これ以上悪化させないというコミュニケーション法を取っているように見える。 ここで容易に信頼を取り戻す…
[良い点] 安定の放置系義母でした。 幼馴染に任せた結果で悪化した訳だが、また詳しく知らない人に言われるまま義息を預ける。 [一言] >彼の事を理解できず、傷つけてしまった私は母親と見られていないかも…
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