急展開
気がつくと見覚えのない部屋の中にいた。
周りには丁寧に整えられた調度品が並び、大きな天蓋付きのベットがある。
俺はその天蓋付きのベットに寝かされていた。
あたりを見回しても人気はない。そこでベットから起きあがり、外に出ようとしたところで部屋に誰かが入ってきた。
「起きましたか?侑士さん。」
そう言って部屋に入ってきたのは九条さんだった。その後ろに続いて部長も入ってくる。
「あの、どうして俺はここに?」
俺はそう尋ねながらも今日の記憶を遡る。
確か今日は九条さんの家に招いて貰って九条さんの両親に挨拶をしていた。その後、豪華な食事をいただいて、途中で森田さんが訪問してきた。
そして明日遊ぶ約束をして再び食事に戻ったのだった。その後の記憶がない。
どうしてこうなった?
「ふふっ、混乱されているようですわね。大丈夫ですわ。ちゃんとご説明してさしあげますから。」
そう言って九条さんが部屋の中の椅子に座った。
「あの後の予定としましてはお父様がお話いただいた私達が暮らす予定の家にご案内しようとしていましたの。けれど侑士さんがご飯の途中で何故か眠ってしまわれまして…それで仕方なく侑士さんをそのままこちらの方に運んでもらったということですの。」
九条さんがそう説明した。
どうやらそういうことらしい。そういえばかすかに急速に眠くなった記憶がある。
「そうだったんですか。それでここがその家ということですか?」
「ええ、そうですわ。それで侑士さん、少しお話があるのですが。」
「なんでしょうか?」
「ええ、実はここで住み込みで働いて貰いたいのですが。」
彼女はそう提案してきた。
「もちろん、生活費などはこちらが負担します。それにお約束通りアルバイト代も出させていただきます。」
彼女はそう言った。
「ちなみに侑士さんのお母様からの許可はいただいております。」
彼女はそう言った。陽子さんが許可したならば何も問題はないように感じる。それに、陽子さん達に迷惑がかからないようになるのだから目的も達成できていると考えられる。
「そうですか。それならば断る理由はありません。」
俺はそう言った。俺なんかを住まわせていただく以上何でもやる所存だ。
「そうですか!それはよかったです。それでは家の中を案内いたしますわ。」
彼女はそう言って立ち上がった。それに部長と俺も続く。
「侑士さんはこれに乗ってください。」
そう言って車椅子を差し出した。そこまでしてもらうのは申し訳ないので断って歩かことを伝えようとすると、
「乗っていただけないと私達の方が困ってしまいますの。」
と先に言われてしまった。そのため俺は車椅子に乗ることにした。
「それでは行きましょうか。」
彼女はそう言って俺が乗った車椅子を押しはじめた。
お読みいただきありがとうございます。できれば後でもう一話投稿します。