唐突な面会
一方その頃、侑士はというとある豪邸にいた。
「はじめまして、娘さんと仲良くさせてもらっています、伊藤侑士と申します。」
そう言って頭を下げた先にいるのは見るからに高貴さが滲み出ている夫婦だった。
「君の事は娘から聞いているよ。いつも世話になっているようだね。」
「君があの侑士君なのね。雪ちゃんからも聞いているわ。」
「部長ともお知り合いなのですか?」
「彼女はこの家で代々仕えてくれている家の子供でね。娘の事を任せているんだ。」
「そうだったんですか。」
「それで、娘さんに執事のアルバイトをしてはどうかと勧められまして、どういうお仕事なのかお聞きしても?」
「ああ、そうだったな。実はこの度真紀が一人暮らし、正確にいうと雪さんと一緒だから2人暮らしか。を始めることになってな、君にはその家で様々なことをしてもらいたい。2人のことを手助けしてやって欲しいのだ。」
「そうなんですか。しかしそれならばお金など貰わなくても手伝わせていただきますが?普段からとてもお世話になっているので。」
「いや、しっかりと労働には対価を払わなければな。それにこれは滅多にお願いなどしない真紀たっての希望でもあるのだ。」
「わかりました。そういうことでしたら是非にでもお受けさせていただきたいのですが。お2人は娘さんと部長の2人暮らしの家に男をあげてご不満はないのですか?」
「あの2人が選んだ男だからな。それに私達もこの目で見て君は信用に値すると思っておる。それに雪さんは強いからな。君が万一襲おうとしても問題ないだろう。だが、もしもがあればどうなるかわかっているな。まー合意があればいいがな。」
「いえ、俺なんかが彼女達をどうにか出来るはずなどありませんのでその心配はご無用かと。」
「そうか。まー堅苦しい話はここまでにしよう。食事を用意したから今日は楽しんでいってくれ。」
「お話は終わりましたか?それでは侑士さん、一緒に食べましょうか。」
「そんな、俺なんかのためにそこまでしてもらう必要はありません。」
「もう作ってしまったのだから食べてもらわないと困る。」
「すいません、それではお言葉に甘えていただきます。」
「私は先に失礼するがくつろいでいってくれ。」
「本日はありがとうございました。」
そう言って九条さんのお父さんは部屋を出て行った。
それから暫く豪華なご飯をいただいていると、
「お嬢様、お客様です。」
とメイドさんが用件を告げに来た。
「どちら様かしら?」
「森田凛様とおっしゃる方です。」
「あら?どうしてやってきたのでしょうか?」
「そちらの侑士様にお会いしたいようです。」
ピクッ。
「侑士さん、彼女と一体どういう関係ですの?」
九条さんの声が一段下がった気がする。
「特に今日約束などはなかったはずですが。森田さんと話してきますね。」
「私も一緒に行きます。」
そうして玄関先へと向かった。
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