異変8
「それで、いつになったら部活を始めるんでしょう?」
俺がそう尋ねると、全員がハッとしたような表情になった。もしかすると忘れていたのかも知れないと考えるがまさかそんなことはないだろう。
「そ、そうね。始めたいと思うのだけれどそれには彼女に退室してもらわないと…」
なるほど、そのための話し合いだったのか。違う話のような気がしていたが気のせいだったようだ。
「いやよ。私はユウの隣から離れないわ。」
薫さんはそう言った。どうやら離れないらしい。
「北山さん、部活はどうしたの?確か今日は活動がある日だったと思うのだけれど。」
「それなら大丈夫よ。部長に暫く休むと伝えてきたので。ユウが最優先に決まってるじゃない。」
どうやら当分部活が始まるのは先のようだ。
「だから、この部活にいる間は彼のことは私達に任せなさいと言っているでしょ。」
「私も仮とは言え入部しているのだからいいじゃない。」
「文化祭が終わってからという約束だったわよね?それならばその約束を守って頂戴。」
部長がそう言った。第二ラウンドは薫さんの入部をめぐっての争いらしい。
「そうも言ってられなくなったのよ。ユウが怪我したんだもの。心配で彼のそばにを離れることなんてできないわ。」
どうやら幼馴染として俺なんかのことを心配してくれているらしい。彼女はとてつもなく心優しいようだ。
「ふふっ、結局のところ貴方が入部したい理由なんてそれでしょう?だから活動を認められないのですよ。」
部長がそう言った。俺個人の意見としては部活のモチベーションは人それぞれなのだからそれもいいと思うのだが、もちろん俺なんかの意見はお聞きではないだろうから口には出さない。
「部活に入る理由なんか人それぞれなのだからいいじゃない。それに活動はちゃんとやるって言ってるじゃない。」
薫さんも俺と同じ考えらしい。
「だからそれでは困るというのですよ。私達は真剣に部活のことだけ考えて活動しているのだから。」
ん?普段そんなに真剣に活動していただろうか。なんなら本読んだりしながらお菓子食べてだべってた気がするのだが。
「この前尋ねた時お菓子食べながらやっていたじゃない!どこか部活のことだけ考えているのよ!」
ごもっともな意見である。
「何事にも休憩は必要よ。それにこれが私達が真剣に活動しているときのスタイルなの。」
全米驚愕の返しを部長は悪びれもせず至って真剣に答えた。まさか部長がそんな考えの元(下)活動していたとは。
「そ、そうなの。確かに取り組み方は人それぞれだし…ってそんなわけないじゃない!思わず丸め込まれそうだったわ!」
部長のあまりの真剣さに思わず薫さんも騙されかけたようだ。
「チッ」
舌打ちが聞こえた気がしたが、まさか部長がそんなことするはずがないだろうから空耳である!
「たのもう!!!」
そして間髪いれずに部室に闖入者がやってきた。
どうやらさらに混沌は深まるようである。
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