異変5
「すいません、離れてもらってもいいでしょうか?」
いきなり女の子に抱きつかれた俺は訳が分からず混乱していた。
「あ、すいません。」
そう言っていきなり抱きついてきた女の子は素直に離れた。
「ちょっと、貴方いきなりなんなの?」
そう薫さんが問いかけた。初対面のはずなのにいきなり抱きつかれて意味がわからなかった。
「あ、申し遅れました。私は森田凛といいます。」
「そう、森田さんね。それで、貴方はユウに何の用があるの?」
と、薫さんは言った。どうやら俺に用事があるようだが、面識はないし、薫さん達が話すと言うことみたいなので、俺はただ黙っているだけしかできない。
「はい、今日はお礼をと思いまして。昨日助けてもらったお礼を言いそびれてしまったので。」
森田さんはそう言った。どうやら昨日の助けた女の子のようだ。
「そうか、君がか。君も無事なようでよかったが、君の不注意のせいで弟が危険な目にあった。侑士がいなかったら君も危なかっただろう。これからは十分注意するように。」
「あ、生徒会長。…えっ、昨日の王…失礼助けていただいた男性の親族さんだったんですね。この度は誠に申し訳ありませんでした!」
彼女はそう言って頭を下げた。
「もういい。侑士が助けたくて助けただけだろうからな。それで話はそれだけか?わざわざお礼を言いにきてくれてありがとう。」
俺が一言も話さないうちに話は終わったようだ。しかし俺のためにわざわざ薫さんや麗華さんが間に入ってくれたのだろうから俺から文句などあろうはずもない。
「いえ、それで侑士様?でよろしいでしょうか。よろしければ一緒にご飯を食べませんか?私、お弁当を作ってきたんです。」
そう誘われたが、既に薫さんが作ってきた弁当がある。しかし、せっかくの申し出を断るのも申し訳ないと思っていると、
「ごめんなさいね。ユウは今日は私が作ってきたお弁当があるの。だから大丈夫よ。」
と、薫さんが断った。それに対して、
「そうですよね、いきなりお弁当を持ってきても困りますよね。それでは明日ならばいかがでしょうか?」
と彼女は言ってきた。そこで俺は2日連続で断るなど、申し訳なさすぎるので、
「大丈夫ですよ。貴方のご負担にならないのならよろしくお願いします。」
と伝えた。俺に作ってくれるのは彼女を助けた感謝と俺への怪我の罪悪感からの義務感だろうからそれならば受け入れなければならないと思ったからだ。俺がそう話した時は薫さんはひどく驚いた顔をしていた。
「はい!では明日精一杯作ってきますね!それでご飯もご一緒していいですか?」
彼女は続いてそう尋ねてきた。
「ちょっと、お兄ちゃんは私達と食べるの。」
と、結奈さんが言った。
「あれ、貴方は隣のクラスの伊藤さん?そう言えば他の方々もたくさんいらっしいますが皆さんどうしてこちらに?」
と、今更だと思う質問をした。
「「「今更!?」」」
そう思っていたのは俺だけではなかったらしい。皆んな口を揃えてそう言った。
「学年を超えて、仲がいいのかと。皆さん侑士様のご家族やご友人なのですね。」
彼女はそう言った。どうやら彼女は少し天然が入っているらしい。
「では皆さん、早くご飯を食べましょう♪大勢で食べた方が楽しいですからね♪」
彼女はそう言って全員を席につくように促した。他のさっきまで争っていた面々も彼女の纏う不思議な空気にすっかり毒気を抜かれてしまったようだ。
「ではいただきます。」
そう言って全員でようやくご飯を食べ始めた。
「ふーん、なかなか面白いことになっているな。」
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