異変2
放課後、文芸部の部室に向かおうとすると、今日は急遽休みにしますと部長から連絡があった。
急に予定がなくなってしまった俺は、何をしようかと考えるが、ひとまず家に帰ろうと思った。
そうして、買い物をして家への道を歩いていると、スマホを見ながら歩いている1人の少女が前にいた。それだけならばよく見る光景だが、彼女の前の信号は赤を灯していた。俺は彼女に向かって走り出すと、車が突っ込んでくるギリギリのところで頭から飛び込んで彼女を助けることに成功した。
特に車が来ていて轢かれそうでも恐怖は感じなかった。足の甲に車がぶつかったが、特に痛みも感じない。彼女は真っ青な顔をしていた。
俺は何事もなかったかのように立ち上がってそのまま飛び散ってしまった荷物を拾い、家への道を歩いた。
彼女はしばし呆然としていたようだが、先程の車の運転手に声をかけられてようやく我に返ると彼にお礼を言おうとした。
そして言葉を失った。彼は平然と歩いていたが、足に割れたガラスの破片が刺さっていた。これにはぶつかった車の運転手も顔を真っ青にしていた。明らかに異常である。
「ちょ、ちょっと!君!待って!」
運転手は大声で呼び止めるが、俺はスタスタと歩いて行ってしまう。そこで運転手は慌てて俺を追いかけて俺の肩を掴んだ。
「君!さっきから呼んでいたのだが!足はそんなに普通に歩いて大丈夫かい!?」
そこでようやく俺が呼ばれていることに気づいた。そして、彼の言葉でようやく自分の足がどうなっているかを見た。深々とガラスの破片が刺さっていた。
俺はそれを見て無造作にそれを引き抜こうとする。すると、
「ちょっ、君!なにをしているの!!」
と先程の男性が言って、俺の手を止めてきた。そして、
「病院行くよ!!」
と言われてその場で留まらせようとしてきた。しかし、俺は家に帰って夕食の準備をしなければならない。なので遠慮しようとするも、
「だめだ!そんな怪我で帰ろうなんて言語道断だ!絶対に病院に行ってもらう!」
と言われた。そして救急車が来るまで強制的に引き留められて救急車に乗せられてしまった。
そして俺と、念のためと助けられた少女は救急車に乗って病院へと向かった。
そして手当を受ける。幸い、大きな怪我ではなく、刺さった場所も悪くなかったようで縫うだけで終わった。
彼女の方も特に異常は見られず、擦りむいただけで済んだ。
そして、警察やらに事情を聞かれていると、血相を変えた陽子さんが飛び込んできた。
事情が説明されると、彼女は俺を抱きしめて大号泣した。
どうやら父の死因が交通事故だったため、過剰に反応してしまったようだ。
「夕飯作らなくてごめんなさい。」
と俺が謝ると、彼女は更に号泣してしまった。てっきり怒られると思っていた俺にはその理由はわからなかった。
そうして、家に帰ると、既に結奈さんと麗華さんがいた。俺が2人にも夕食を作れなかった事を謝ろうとすると、俺の包帯が巻かれた足を見た2人がその前に駆け寄ってきた。
「その足、どうしたのだ!?」
「だ、大丈夫!?お兄ちゃん?」
そして2人は謝罪する俺に、そんな事はいいからと椅子に座らせた。そして、理由を陽子さんから聞いた彼女達は今日は何もしなくていいからと身の回りの事を全てやってくれた。
好意がわからない俺には何故こんな事をしてくれるのかさっぱりわからなかった。
お読みいただきありがとうございます。ファンタジーものを書きたいのですが、行き当りで2つは無理でしょうか?