異変 〜田中視点〜
「ふーん、なるほど。そんなことになっているのか。」
彼女たちの会話を盗聴器で聞いている者がいた。田中である。
「生徒会長に副会長まであいつのことが好きだとはねー。さてどうしようか。副会長はなかなかいかれた考え方をしているなー。」
俺は考えを巡らす。会長である彼の姉を彼から引き剥がす。そのために生徒会に入ったが、さっそく有用そうな情報を手に入れた。
これは薫と同じような作戦が使えるかもしれない。と、考えるがこれはなかなか難しいかもしれないと思い直す。
これにはまず、彼が彼女のことを好きになる必要がある。しかしそれには色々と障害がある。彼と会長は義理とはいえ家族だし、彼は彼女にどういう印象を抱いているかわからない。それにもし、好印象を抱いていなければそこから好意を抱かせるには骨が折れる。
さらに最大の要因として、同じ事を繰り返して彼が人に対しての優しさを損なえば本末転倒になる。
ならばやはり彼とは直接的には関わらない形で引き剥がすのが妥当か。どちらにしろもう少し情報が欲しいところである。俺はそう考えながら家への道を歩く。
そういえば、今日は彼の様子も少しおかしかった気もする。薫と朝、一緒に登校していなかったのは薫が会長と話していたからだが。それを差し引いても少し変だった気がする。周りと距離を置いている感じはいつものことだが、鋼のメンタルを身につけていた気がする。感情の起伏がなく、何かを言われてもされても気にもしない。昨日はそんなことはなかったから昨日家に帰ってから今日までの間に何かあったのだろう。
朝の薫と会長の会話を聞く限り会長が原因か?やはり彼の家族はろくな事をしないようだ。
いや?そうでもないか?俺が考える俺が持っていない物を持っている俺が憧れるヒーローは根っこからの善人だ。偽善などではなく、そのために命を軽々しく捨てる。ならば、感情の変化など必要ないかもしれない。人間臭さを捨てて初めて完全にヒーローと呼べる善人になれるのかもしれない。ならば彼の姉はたまにはいい事をしたのかもしれない。まぁー排除するのは確定だが。
それに、薫は何がしたいんだ?縁を戻したいのだろうが、どうもやっていることがよくわからない。あんな事では彼の気持ちが戻る訳ないのに。それに彼女自身、どこかやっていることもチグハグだ。それに今朝の感じはどことなくサイコパス感も漂っていた。害がないならいいが、何かするなら即刻退場願わねば。
俺はそのような事を考えながら家へと帰宅した。
お読みいただきありがとうございます。田中と妹をどうやって関わらせようか考え中です。