異変 〜麗華視点〜
朝、いつもより早く私は家を出ると学校へと向かった。薫と話をするためだ。
生徒会室で彼女のことを待っていると、そう待たずして彼女がやってきた。
「お久しぶりです、麗華さん。それで話って?」
彼女は入ってきて早々そう尋ねてきた。何か少し焦っているように聞こえる。
「うん、今日呼んだのは侑士とのことについて聞きたかったからだ。」
私はそう言うと彼女は疑問を抱いたような顔をした。
「単刀直入に聞くが、侑士と別れたと言うのは本当か?」
私はそう尋ねた。すると、
「何を言っているんですか?私がユウと別れるわけないでしょう!」
と鬼の形相で答えてきた。その勢いに思わずたじろぐ。けれどどういうことだろうか。侑士は元から付き合っていなかったと言う。彼女は侑士と別れていないと言う。これでは矛盾している。
私はとりあえず彼女に落ち着いてもらい、話を更に聞くことにした。
「薫、落ち着け。……落ち着いたな。もう話してもいいな。それで話の続きだが、昨日侑士に田中について尋ねたんだ。彼と侑士は同じクラスだからな。そしたら侑士が田中と薫が付き合っていると言ってきたのでな。薫にどういうことか確認したかったのだ。」
私はそう彼女に伝えた。彼女の顔が田中の名前を出した途端に変わったのを私は見逃さなかった。
「ユウが?そんな事実はあり得ません。私がユウ以外を好きになることなどありませんし、彼以外と付き合うなど天地がひっくり返ってもあり得ません。」
彼女はそう言った。ますます意味がわからない。一方は付き合っていないと言うし、一方は付き合っていると言う。どちらかが嘘をついていることになるが、どちらも嘘を言っているようには見えなかったし、どちらも好きあっていたように見えたので嘘をつく理由も見当たらない。
「私は用事ができたので失礼します。ユウの誤解をすぐにでも訂正して信じてもらわないと。」
彼女はそう言って出て行こうとする。しかしこのままだとわからないままなのでどうにか彼女を呼びとめる。
「待て、まだ話は終わっていない。それでその話をしたあたりから彼の様子がおかしくってな。話していてどうも彼がそこにいるのにとてつもなく遠くにいるような感覚に陥ってな。それで侑士と薫が別れていなかったなら彼の事を頼もうと思ったのだ。彼に私達の声は届かなくてな。」
私はそう言った。私の記憶にはないが、義父が事故で亡くなった時薫が侑士を慰めてくれたことは聞いている。そのため、彼女にだけは心を開いていたように見えたので、家族として情けないが彼女に頼もうと思ったのだ。
「わかりました。彼を支えるのは私だけの役目ですから。」
彼女はそう言った。その言葉に私は違和感を覚える。彼女は前から彼に対して独占欲が強かったが、それは彼女の愛情の大きさゆえだった。しかし、反面、彼女は優しかったので、それで誰かをきずつけるようなこともしなかった。
それが今では私に敵意を向けてきていた。
やはり何かが起こっている。私はそう確信をし、彼女が出て行く背を見守った。
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