異変 〜飯塚穂波視点〜
朝、教室で静かに本を読んでいると、侑士君が教室に一人で入ってきた。どうやら今日はビッチさんと一緒ではないようだ。だからといって彼女が付き纏うのをやめたわけではないだろう。
そうして暫く授業をつけていたが、どことなく侑士君がおかしい気がする。何がと具体的なことはわからないが、どことなく纏う空気が違うのだ。
違和感を覚えながらも昼休みになったので部室に向かう。
私達はいつものように文芸部に集まると昼飯を食べていた。
暫く和やかに会話を楽しんでいたが、やはり彼女達も彼の異変に気付いたようだ。小声で話しかけてきた。
(侑士君の様子おかしくない?)
(雪さんもそう思われますか?実は私もそう感じていましたの。)
(やっぱりそうですよね。)
やはり私の勘違いではなかったらしい。昼休みの間話していたが、それは確信に変わる。
そうして教室に各々戻る中、私は午後からの彼の様子を詳しく観察することにした。
彼を授業中後ろから見ていて感じたことは、彼はこの世界にいないように錯覚した。確かに体はここにいるが、本人はどこか遠いところから観測しているような、会話してみても温度を感じなかった。いつもはどこか壁を感じるが、彼からの優しさが感じられたのに、今は同じ場所にいるのに、彼だけ違う空間にいるような。彼との距離が近くにいるのにとてつもなく遠く感じた。
そうして、放課後になり、文芸部の部室に向かう。彼は生徒会に呼ばれたため、遅れてくるようだ。今のうちに情報を共有しておかなければならない。
「それで、侑士さんの様子はどうでしたか?」
「うーん、言葉にするのが難しいのだけれど、おかしいのは確かね。彼がとても遠くにいるように感じるわ。」
「そうね。昼に話したけれど彼から感情が感じられなかったもの。彼の声がとても無機質に聞こえたわ。」
やはり私達が感じたことは一緒だった。ならば何かがあったとしか考えられない。昨日の放課後は普通だったからそれから今日の朝までの間に何か合ったのだろう。
「となると、家かしら?」
そうとしか考えられない。家族間でなにかあったのだろう。
「やはり一刻も早くあの家族から引き離すべきですわ。いっそ拉致でもしましょうかしら。」
真紀ちゃんがぶつぶつとまた怖いことを言っているが、一刻も早く引き離さなければならないという意見には賛成だ。
「彼が戻ってきたら聞いてみましょうか。」
そうして私達は彼が部室に来るのを待つことにした。
お読みいただきありがとうございます。遅くなりすいません、ワクチンでダウンしていました。