別れ2
「いえ、きっと付き合ってなどなかったんでしょうね。私の一方通行だったようです。」
俺はそう答えた。誰かに好かれることのない俺がもともと誰かを好きになる必要などなかったのだろう。
「えっ?そんな訳ないだろう?確かに侑士達は恋人同士だったぞ?」
麗華さんはそう言った。俺の一人称が変わっていることには気づかなかったようだ。そうなんだろうか?ならば俺は人からの好意がわからないという事になる。好きってなんなんだろうか。
「そうなんですか?なら恋人ってなんなんでしょうね。」
俺は彼女に聞いてみた。生徒会長で成績優秀な彼女ならその答えを知っているのかもしないと思ったからだ。
「どうしたんだ?いきなりそんなこと聞いてきて。私も恋人がいたことはないからなんとも言葉にしにくい質問だな。」
彼女はそう答えた。麗華さんにわからないのならば、俺なんかには分かるはずもなかったのだ。
「そうですか。それでお話しというのは以上でしょうか?」
俺は彼女にそう問いかけた。すると、
「にわかには信じられないが…つい最近までは付き合っていたはずだ。それにあの薫が浮気をするなどとても信じられない。どういうことだ?」
と彼女はブツブツ呟いていた。そして、
「侑士、よく思い出せ。お前は確かに告白をしたはずだ。そうだな?」
彼女はそういった。俺の記録に確かにそう残っている。
「はい、確か私からしたと記憶しています。」
「そうか。そして彼女はなんと言った?」
「「ありがとう。私もずっと好きだったの。これからよろしくね。」ですね。」
「うむ、ならばやはり付き合っていたのではないか?」
彼女は改めてそう問いかけてきた。
「どうなんでしょう?俺は確かにそのつもりだったんでしょう。ですけど彼女はきっとそのつもりではなかったんではないでしょうか?もしくは付き合っていたのだとしても同情だとか憐れみだとかだったんではないでしょうか。」
俺はそう答えた。彼女の気持ちは彼女にしかわからない。
「侑士、何を言っているんだ?それはないだろう。」
彼女はそう言った。彼女は怒ったようだが、俺には本当にそうなのかもうわからなかった。
「すいませんでした。」
俺はとりあえず謝っておく。原因はわからないが俺が全て悪かったのだろう。
「ま、まて。私は別に怒ってなどいないから謝るな。」
彼女はそう答えた。やはり俺には好意だけでなく他人の感情などわかるはずもなかったのだ。
「そうですか。」
そして会話が途切れてしまった。それから暫く経つと彼女は部屋を出て行こうとする。
「侑士、もう一度落ち着いて考えてみてくれ。おやすみ。」
彼女はそう言った。俺は落ち着いているし彼女の方がどうやらとても混乱しているようだ。そうして彼女は部屋を退出した。
それから俺は何事もなく勉強に戻った。好意がわからなくなった俺は空っぽでとても空虚だったが、それと同時にこの白黒の世界は余分なものがなくてどこかスッキリとしていた。
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