新たな動き
次の日、俺が朝起きて朝ごはんを食べる。いつも通り1人の食卓だ。そうして家を出るとこれまたいつも通り薫さんが待っていた。
「おはよう、ユウ。」
「おはようございます。」
これが最近の朝の風景だ。いつもは彼女が積極的に話しかけてきてそれに俺が相槌を打つ形だが、今日は聞きたいことがあったので、俺から話しかけることにした。
「昨日文芸部に入りたいという話でしたが、いきなりどうしてなんですか?」
と俺は聞いた。彼女はそういったものには小さい頃から興味を示さなかったはずだ。俺が話しかけると、彼女はとても嬉しそうな顔をした。まさに喜色満面といった感じだ。
「ユウと少しでも一緒にいたいと思ったの。ダメ?」
と彼女は可愛らしく首を傾げて聞いてきた。とても可愛いと思うが、俺が勘違いするようなことは決してない。俺なんかが勘違いするのは烏滸がましいにも程があるからだ。
「そういった理由を否定する訳ではありませんが、他の真面目に活動されている方々に迷惑になるのではないでしょうか?」
俺なんかが彼女に意見するのは心苦しいが、他の3名の方々がしっかりと真面目に活動しているのに対してその理由さとても不真面目に思たからだ。
「あら、部活をする理由は人それぞれだと思うわよ。それに活動自体は真剣に取り組むつもりだもの。」
と彼女は答えた。そう言われると俺から言うことは何もない。真面目に活動するのなら理由はどうあれ問題はないからだ。
「そうですか。悪くいってしまってすいませんでした。」
俺は素直にそう謝罪した。彼女が不真面目に部活を取り組むのならと思ったが完璧に俺の余計なお世話だったようだ。
そうしてそこからはまた彼女が話しかけてきて俺が相槌を返すと言う展開が続いた。
学校に着くと、それぞれ自分の席に向かう。彼女と一緒に登校し始めた時は刺すような視線を感じていたが、今は少しずつマシになってきている。それでも、嫉妬や嫌悪といった多くの悪感情を含む視線を浴びるが、俺なんかが彼女と話しているのだからその視線は当たり前だろうと納得している。だが、それは彼女がとてつもなく優しいからであって、未だに幼馴染の俺なんかを気にかけてくれているだけである。だから嫉妬などはする必要はないと声を大にして言いたい。もっとも俺なんかにはそんな度胸もないのだが。
そうしていつも通りに学校を過ごし、家に帰る。夕食を準備していると、今日も麗華さんが少し早く帰ってきた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
俺がそう返すと、彼女は着替えてきてから椅子に座った。
「田中洋介という子はが確か侑士と同じクラスだったわよね?」
と唐突に尋ねてきた。
「ええ。」
と返事を返すと、
「どういう子なの?」
と再び尋ねられた。それに対して、
「そうですね。すごい人です。俺なんかとは比べものにならないくらいに。運動もできるし勉強もできる。顔もいいしで完璧な人です。」
と答えた。いきなりなんなのだろう。もしかして好きなのだろうかと灰色の脳細胞で閃いたので、
「もしかして好きなんですか?」
と尋ねると、
「あ?」
と思わずすくみあがるほどの言葉を吐かれた。無神経な言葉で怒らせてしまったのかと思い、
「すいません、すぎた言葉でした。」
と謝罪すると、
「ふん、いいぞ。」
と許してもらえた。それに対して安堵の息を漏らすと、
「ありがとうございます。」
と伝えた。そういえば薫さんの彼氏でもあるなと思い、
「あとは北山さんと付き合っているので恋人になるのは難しいと思いますよ。」
と忠告する。けれど彼女に俺なんかの忠告は余計だと思い、
「すいません余計なおs「ちょ、ちょっと待て!!!」・・・どうしました?」
と尋ねた。彼女が大声を出すのは珍しい。
「も、もう一度言ってくれ。誰と誰が付き合っているって?」
と聞いてきた。彼女がそんなに動揺するのも珍しい。俺は彼女が田中君の事をよっぽど好きだったのかと驚きつつも、
「田中君と北山さんです。」
と答えた。すると、彼女は固まってしまった。よっぽどショックだったのだろうか。俺なんかが励ましても気に障るだけだろうと思い、そっとしておく事にし、その場を離れた。
お読みいただきありがとうございます。本格的に大学が始まったので更新回数減るかもです。