新たな動き 〜麗華視点〜
学校に到着し、生徒会室に向かうと、既に副会長の萌乃と侑士監視員で書記の五十嵐君が談笑していた。
部屋に入ってきたことに気づいたのか各々が
「おはよ~」
「おはようございます。」
と口にする。それに対して私も
「おはよう。」
と返す。そうして席に着くと、生徒会の仕事を個々人で始めることにした。
暫く時間が経つと扉がノックされた。こんな朝早くから誰だろうと思いつつも、
「どうぞ。」
と促すと、1人の青年が入ってきた。
「うん?どうしたんだ、田中?」
驚きつつも五十嵐君が声をかける。入ってきた生徒は田中洋介だった。何故知ってるか?生徒会長なら全校生徒を知っていることくらい何も不思議ではないだろう?この学校の生徒会の役割のため全校生徒の事はある程度調べているのだ。
「失礼します。
いきなりすいません。実はおりいって相談がありまして。」
と彼が訪問理由を口にした。生徒会が生徒の相談に乗るのは当たり前のことなので、
「どんな相談なんだ?」
と彼に内容を尋ねる。すると、
「はい、是非とも俺も生徒会に入らせていただきたくて。」
ということだった。生徒会に入るのには厳密な規則はない。会長は選挙で選ばれるが、そのほかの役職は会長に任命権が一任されているし、定員や役職なども細かくは定められていない。また、この学校では、生徒会は予算の管理や学校行事の運営など大きな権限が認められている。更に授業の一部免除もある。その関係で、優秀な人が集まるようになっているし、変な考えを持った輩が生徒会に入ると学校全体に影響を及ぼす恐れがある。そのため任命権を持つ会長は真剣に人を選ばなければならない。
そういった事情を鑑みて彼のことを考えてみる。彼は学業優秀、スポーツ万能、性格も良しと非の無い人材に思える。けれど裏があるかもしれないので確認を怠ってはならない。
「そうか、基本的に優秀な人材は歓迎だ。生徒会で話し合うので今日の放課後にもう一度来てくれるか。」
私がそう発すると、
「わかりました。ではまた今日の放課後に。失礼します。」
と彼は去っていった。なんぼ私に任命権があるといっても周りに相談もなしにとはいかない。
「昼休みにでも全員呼んで相談しようか。それはそうと五十嵐君、彼はどうなんだい?」
私はそう尋ねた。なんぼデータがあるといっても同じクラスの彼からの話は是非聞きたいところだ。
「そうですねー。まークラスの人気者といったところですかね。勉強も運動もできて顔を性格もいい。欠点がないくらいですね。」
と言った。やはり彼は優秀な人間のようだ。ならば是非とも生徒会に入ってもらいたいところだ。
「個人的な印象を言うと少し胡散臭い気もしますけどね。誰にでも優しいですけどどこか距離をとっている気もします。」
と言うことだった。うーん、距離を置いているだけならば何も問題ないのではないだろうか。それに侑士の様子を聞ける人材が増えることは大歓迎だ。
「これ以上はほかの子も交えて相談してみようか。」
私はそう締めくくり、仕事に戻ることにした。
そうして昼休み。彼のことについて全員に尋ねると、口を揃えて大丈夫だろうとのことだった。なので放課後にそのことを伝えることとなった。
お読みいただきありがとうございます。いきあたりでその日その日に話を考えているのでどこに行くのかは自分でもわかりません。