アルバイト探し4
次の日も同じように薫さんと学校まで登校し、昼は文芸部の皆さんと他愛無い話をしながらご飯を食べた。
そして放課後になり文化祭の話になった。
「昨日はどこまで話したかしら。」
部長がそう尋ねる。
「昨日はどれくらいまでに書き上げるかなどの予定決めでしたね。」
代表して飯塚さんが答えた。昨日の話し合いで大まかなスケジュールは決まった。
「なら今日はテーマについて話し合いましょうか。」
部長がそう言った。本にはご存知の通り幅広いジャンルがある。その中から何について書くかを決めるようだ。
「うーん、じゃあとりあえず書きたいものについてあげていきましょうか。」
ミステリーやファンタジー、ロマンスなど様々な意見があがる。そこで話し合いが行われた結果、ミステリーと青春物の2つに絞られた。
「やっぱり高校生なのだから青春物じゃないと。」
とは部長の談。ミステリーを推しているのは九条さんだ。
「私も青春物がいいかな。今だからかける物もあると思うもの。」
飯塚さんもそちらのようだ。
「侑士君はどうかしら。」
俺にも意見を求められる。俺なんかの意見が役に立つとは思わないので、
「皆さんが書きたいものに合わせます。」
と答えた。すると全員が不満げな顔をして、
「貴方の意見が聞きたいの。他の誰でも無い貴方の意見を。」
と部長が言ってきた。それに対して、部長を怒らせてしまったと思い、
「すいません、自分の意見など役に立たないと思いまして。」
と謝罪した。すると彼女は、
「いいのよ。私達は貴方のことを否定したりしないし、貴方の考えを聞きたいのよ。」
ということだった。俺の考えなんて言っていいのだろうか。
「ごめんなさい、強制している訳ではないのよ。ただ、貴方がどんな風に考えているか知りたかっただけなの。」
と彼女は申し訳なさそうにしていた。俺なんかがそんな表情をさせて大変申し訳なく思っていると、
「申し訳なくなんて思わなくていいのよ。大切な人なら心配もするし知りたいと思うもの。」
と彼女ほ言った。そんなに顔に出ていたのだろうか。彼女はよく俺なんかを見ていてくれるなと思った。そこまで言ってもらったのなら意見しない方が失礼に当たるだろう。
「ありがとうございます。では俺の考えを言わしてもらおうと思います。個人的にミステリーは書くのが難しいので青春物がいいと思います。」
と俺は考えを示した。
すると彼女達は満足げな顔をしていた。
「ありがとう、侑士君、貴方はもっと自分の事を話してもいいのよ。ここには貴方を否定したりする人は決していないのだから。今すぐには信じられないかもしれないけどそれは私達が信じてもらえるように頑張るから。」
部長はそう言った。
かつて否定された俺は自分のことを自発的には決して話さないようになった。また否定されるのが怖いから。けれどそれとは同時にどこかで誰かに俺という人間のことを認めてもらいたいと思う心もある。それは人間ならば当たり前のもので俺が今必死に隠しているものだ。今すぐに全てを話すことなど怖くてできない。この人達もかつての人と同じように裏切るのかもしれないと怖くなるから。
それでも俺は縋ってしまう。誰もと距離を置いて孤独でいることは辛いから。少しずつでも信じていければいいなと俺はこの時思った。
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