プロローグ
初投稿です。
ご清聴の程よろしくお願いします。
ある、夏の顔を秋が隠し始めた日。
少し肌寒い風が吹いている朝に、俺は歩いていた。
俺の名前は田辺直人29歳のフリーターだ。
俺は今、バイト先へ向かっている。
まだ9月の中旬だと言うのに街を歩く人々は、長袖の服を着ている。
今年は異常だ、9月なのに10月の気温で、体調を管理するのが難しい。
だが俺はそろそろ社会人になってから10年が経つ立派な大人であると思う、なので体調管理をしっかりしなければいけない。
フリーターである俺にも社会人である自覚はあるのだ。
俺は中卒だ。
一応高校には入っていたのだが、中退し、フリーターになった。
俺は高校時代ゲームとアニメに全てを掛けていた。
そのおかげで少しずつ不登校になっていき、最終的には中退と言う訳だ。
だが流石に中卒はマズイ訳で、バイトをしながら通信制の高校に入り、4年程掛け、無事に高卒認定を貰うことが出来た。
そんな俺を周りはゲームのし過ぎで学校を中退した友達の居ない童貞のキモオタだと思うだろう。
まああながち間違ってはいないのだが友達はいる。
俺はこう見えて友達は多い方だ。
社会人になってからも付き合いのある友達は、3人程いる。
少ないと思う人もいるだろうが、学生時代に出来た友達で、社会人になってからも付き合いのある友人がいること自体が珍しいと俺は思っている。
そんな事を考えていると、バイト先に到着した。
全国チェーンの某家電量販店の店員のバイトをしている。
意外かも知れないが、俺はコミュ力は人並み以上にあると、自負している。
その為俺の仕事は、お客様の接客や、レジうち等がメインで、事務仕事等もやっていたりしている。
何故社員にならないのかと言うと、学生時代のとある出来事がキッカケだ。
俺はその出来事によりトラウマを抱えてしまい、精神的な理由でバイトのままを希望したのだ。
その事を店長や社員の方々は理解してくれている。
嬉しいことだ。だがその事に対する理解は、仕事をしっかりとこなし、周りからの信頼を獲得しているからと言う事を忘れてはいけない。
実際俺は、バイトではあるが社員並みに仕事は出来ている。
俺はこの仕事が好きだ、元々PCやゲーム機等といった電化製品が大好きだからだ。
そうこうしていると、就業時間が終了し、俺は街の繁華街へと繰り出した。
実は高校時代の友人に飲みに誘われたのだ。
俺は指定の居酒屋へと入り、友人と再会した。
「久しぶりだな、智也」
「こちらこそ久しぶり、直人」
彼の名前は辻元智也、大手商社勤務のエリートだが、実態は重度の隠れオタクである。
キッカケは当時読んでいた1冊のラノベだ。
当時の俺は、オタクへの道に片足を突っ込んでいる状態だった。
そんな時に友達になったのが智也だった。
最初は驚いた、クラスの上位カーストにいる人間が、ガチガチのオタクだったから。
話していくにつれ、俺たちは意気投合し、親友となったのだった。
「取り敢えず生でいいか?」
「ああ、頼むわ」
「それにしてもいつ以来か、お前に会うのは」
「大体4年くらいじゃないのか?俺が高卒認定貰った時に、お祝いするからって呼び出されたのが最後だった気がするからな」
「そう言われるとそんな気がしてきたわ」
すると店員さんが、生ビールを2つ運んで来た。
俺と智也はグラスを持った。
「と、まぁそんな事はさて置き、乾杯をしよう、直人乾杯の挨拶を」
「俺がやるんかい、まあ良いけどさ...え〜では、親友との再会を祝しまして」
「祝しましてぇ〜?」
「「カンパーイ!」」
こうして俺達のの宴会が始まった。
ーーーーーーーーーー
「そう言えば2人はいつ来るって?
「今向かってるってさ」
「そうか、じゃあそれまでは俺達で楽しむか!」
「おうよ!」
しばらく2人で飲んでいると......」
「おっす2人とも!皆の優斗くんが降臨してやったぞ!」
「声がデカい、あと周りの迷惑を考えろ!全くお前は昔から........」
はぁ、また竜樹の小言が始まった。
今回の宴会は俺と智也の他に2名、炬 竜樹と武山優斗の4人の宴だ。
俺達4人は親友だ。
竜樹や優斗もオタクで、元々智也の友達だったのだが、俺が智也と仲が良くなった頃に2人を紹介され、友達になり、そして親友となったのだ。
「よしこれで全員揃ったな、では直人君、改めて、宴の挨拶を!」
「では、改めまして、俺達、親友との再会を祝しましてぇ〜」
「「「祝しましてぇ〜?」」」
「カンパーイ!」
「「「カンパーイ」」」
こうして、俺達の宴が改めてはじまった。
ーーーーーーーーーーーー
俺達は結局閉店間際まで、飲んで、食べた。
高校時代の話や、仕事の話をしたのだが、優斗が上司の愚痴を話し始めた時、神のイタズラと言うべき偶然が起こった。
なんと、優斗がハゲ、チビ、デブ、等と罵っていた上司が店に入ってきたのだ。
上司を見て凍り付く優斗。
自分の悪口を言われ、顔を真っ赤にして優斗を睨む上司。
完全に俺達3人は蚊帳の外のなのだが、正直に言おう。
見てて滅茶苦茶面白かった。
必死に弁解する優斗と拗ねるおっさん上司。
俺達は笑いながら酒を仰いだ。
随分と久しぶりの楽しい時間だった。
だが吐き気が酷く、フラフラと歩いている気がする。
「やっべ、飲みすぎたな」
俺は酒には結構強い方なのだが、それでも流石に飲みすぎた。
しかしまあ、友達と飲む酒はいつもより美味く感じる訳だ。
家で晩酌などはするのだが、断然こちらの方が良いものだ。
近いうちにまた、一緒に飲みたいものだ。
「次は俺が誘うか」
俺は夜道を歩きながらそう、呟いた。
「おい!あんた!危ねぇぞ!」
そんな声が聞こえた。
「え?」
マヌケな話だが、俺はその一言しか発することが出来なかった。
そして、テレビの電源を切ったように、俺の意識が、プツリと闇へと、消えた。
目覚めるとそこは、一面、美しい緑の草原だった。
「何で俺はこんな所に?家に帰っていた途中だったはずじゃ...」
俺は夜道を歩いていた記憶しかない。
何が起こっているのかが分からなく、混乱しそうになる自分を、必死で堪える。
とりあえず辺りを歩いてみることにする。
それにしても此処は気持ちのいい所だ。
一面の草原に加え、青い空、輝く太陽、そして、気持ちのいい暖かい風が吹いていて、気持ちがいい。
「はっ!!」
いつの間にか眠っていたようだ。
しかし不思議だ、何時間も眠っていた筈なのに陽の光が全く変わっていないのだ。
ちょうど陽の光がお昼が終わる時間帯にある場所と同じ場所にあるから、心地いいのだ。
俺は欠伸をしながら背伸びをし、起き上がろうとした。
すると急に少年が俺の顔を覗き込みんできた。
「やぁ!おはよう!田辺直人君!」
「っ!!」
俺は凄く驚き、声が上手く出なかった。
人は驚きすぎると、声が出ないと言うのは、聞いた事はあったが、実際本当なのだとこの時、この身を持って知った。
俺は飛び起きたあと、少し落ち着きを取り戻した。
意を決して、謎の少年に話し掛ける。
「えっと、どちら様ですか?」
「神です」
「......は?」
「神です」
どうやらこの少年は、神らしい。
「マジで、神なんですか?」
「マジなんだよねこれが」
意外と親しみやすい神のようだ。
「あ、そうそう直人くん、僕には敬語は使わなくても良いよ、僕、そう言うのは嫌いだから。
それに、君とは仲良くしたいからね」
「あ、ハイ。
あ、じゃあ君の事はなんて呼べば良い?」
「ん〜、実は神ってさ、明確な名前がないんだよね。
君の世界でも、場所によって名前が違う神とかいただろう?
それに、あれはあくまで、君達人間が勝手に付けた名前だからね。
一部のプライドの高い神なんかは、人間を良く思っていない者もいるからね。
昔ね、神同士で人間が付けた名前を使うか、使わないか、って言う問題が発生した事があってね。
結論としては使わない、って事になったんだ」
「でも、名前が無いのって不便じゃないのか?」
「いや全く、僕達神は完全な意思疎通が出来るからね名前なんか無くたって問題なんか無いのさ」
「神ってスゲー」
その後も俺は少年と話した。
話す中で、俺達は自然と友人になっていた。
またこの少年にも名前を付けた。
名をロイ、話していて面白ロイ、から付けた。安直だって笑うかもだが、彼、ロイは気に入ってくれた。
その他は、ずっと雑談をしていた。
特に俺の人生の話なんかは目を輝かせていた。つまらないだろうと思ったのだが、面白かったようだ。
どうやら神は自分が信仰されている世界のみ見る事ができ、ロイは俺のいた世界とはまた別の世界で信仰されているらしく、俺の世界の事は殆ど知らないようだった。
俺は新しい友人、ロイとの会話を楽しんだ。
しばらく時間が経ち、急にロイが真面目な顔をし始めた。
ロイは、真面目な顔をこちらに向けた。
「さて直人、真面目な話をしようか」
「あ、ああ」
出会った当初は気さくな雰囲気の漂わせているロイだったが、さっきの迫力は凄まじかった。
「さて直人、君がここにいられる時間の限界が近くてね、先の話をしようと思う」
「あ、そう言えばここってどこなんだ?」
「ここは君たち人間の言うあの世とは別の場所で、
神が死んだ人間と対話をするところなんだ。
本題に入ると君は僕の世界へと転生してもらう事にしたんだ」
「おお!転生か!もしかして、剣とか魔法の世界だったりするのか?」
「喜びたまへ、そのもしかして、だよ」
俺はいい歳して、子供の様にはしゃいだ。
昔からファンタジー系の作品が大好きだった為、魔法などへの憧れがあったからだ。
「では同意を得たって事で良いかい?」
「あったりまえだ!モチのロンだよ!」
「よし、では君の転生を始めるとしよう!」
「頼む!」
そう言った瞬間体が発光し始めた。
それに加え浮遊感を感じ、足元を見ると空中に俺は浮かんでいた。
「おお!何だこれ!すっげぇ〜」
「ではこれから君は転生するわけなんだが、言い忘れていた事がひとつあるんだ」
「お?なんだ?まさか転生先が最強の魔法を最初から使える体になってるとかか?」
俺は嬉々としてそう質問した。
だが帰ってきた答えは、俺にとっては無慈悲で、
想像を絶する絶望を与えるものだった。
その答えとは。
「本当に申し訳ないんだが、転生先の君の体は魔法が使えない様にしておいたから」
「.......は?なんで?」
「ちょっとしたイタズラ...かな?」
「ちょっと?お兄さん?神様?それはないんじゃ」
「それでは、転生スタート〜!!」
ロイは俺の言葉に割り込むように喋り、手をこっちに向かって振っている。
その時の顔は後々思うと少し寂しげで、けどどこか、希望の篭った目をこちらに向けていたように思う。
だがその時の俺は、それ所ではなかった訳で、全く気づいていなかったのだ。
「ロイ〜覚えてろォーーー!」
最後に恨み言を言いつつも、俺はロイの世界へと転生したのだった。
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