五章 ノクターナルの秘密
各自近くにあった椅子に座ったが、一様に顔は暗かった。
無理もないか……あれだけの実力差を見せられて、しかもこれから戦う事になるんだからな……
バルトは空気を変える為に、わざと少し大きな声で話し始めた。
「皆、顔が暗いぞ?」
全員がバルトを驚いた表情で見つめる。
「ん?どうした?」
バルトはわざとらしく、とぼけた表情で全員を見返す。
「バルト、その冗談は笑えないよ」
クリスが少し苛立った様子で、バルトから視線を外し答えた。
キャスのダメージが大きかった心配もあり、強い口調になってしまったことに気付いたが、クリスは続けた。
「シトリー以外誰も対応出来なかったじゃないか……バルトはシトリーがいるから良いかもしれないけど、今や僕たちはもはやただの荷物だよ。
お荷物がヘラヘラ笑ってられると思う?」
クリスは苛立ちを隠すことが出来ず、バルトに思い切り大声を出してしまった。
バルトは静かに聴き終わると、クリスの前に行きしゃがみ込んだ。
「話は分かった。つまり、クリスは俺をずっとお荷物だと思ってたのか?」
「は?何でそうなるの?私たちが、お荷物……」
「俺は、カシウスの時もシトリーの時もクリス達が援護してくれたから上手くいったと思ってる。俺だけの力じゃ間違いなくカシウスにやられてた。俺はクリス達より全然弱い。俺の方がお荷物って事になるだろ」
「そ、そんなわけないじゃん!バルトは強いよ!」
クリスは顔をあげ、バルトを見るとバルトはクリスのおでこをデコピンした。
「俺も、クリス達を同じ様に思っている。俺達は足りない所を補えるパーティーじゃないのか?今回はシトリーがベルゼを知っていたから素早い対応が出来た」
「バルトの言う通りだよ。たまたま僕がベルゼを知っていたから対応出来た。クリス達も逆の立場なら間違いなく対応出来ていたと思うし」
少し離れたところでシトリーがバルトに静かに同意した。
「キャスの借りは……俺の借りでもある。クリスと形は違えど俺もキャスと契約してる以上……俺はベルゼを許さない。必ずケルベロスで借りは返すぞ」
「ごめん……ありがとう」
クリスは下を向くと、床に大粒の涙が点々と落ちた。
「皆はどうだ?大丈夫そうか?」
「大丈夫ですわ、クリスが私の不安を代弁してくれました」
「私も大丈夫です。悔しいですが……次に会うときには完全にベルゼの魔法を攻略すると約束します」
「私も大丈夫。同じミスは二度としない」
ハンナ達は次々に答え、場の雰囲気は先程とは違い、いつものパーティーに戻っていた。
「ダン、話を遮って悪かったな。話を聞かせてくれ」
「最初に改めて謝罪をさせてください……本来関係のない君達をノクターナルの闇に巻き込んでしまい本当にすみません。
そして……依頼を受けてくれて本当にありがとう御座います」
ダンはバルト達に深々と頭を下げると、ラルカも一緒に頭を下げた。
「いや、気にするな。いきなりの襲撃で少し戸惑ってしまっただけだ」
「……ありがとう御座います。では……」
ダンは少し間を置いて、今までの経緯とノクターナルの秘密を話し始めた。
「……それ俺達に話して本当に良かったのか?」
ダンの話を聞き、バルトは驚きを隠せずにいた。
「もちろんです。バルトさん達の力をお借りするに、話さずにいるのはあり得ません」
ダンはバルトに笑顔で返した。
ダンの要約すると、こうだ。
ノクターナルの姫“アズリエル”は、実はダンの本当の兄弟ではなく、ダンが幼い時に召喚した使い魔だった。
頭も非常に良く、常にダンや前国王をサポートし続け、ダンの推薦もあり王女として国を治める事になる。
国の経営に関してまさに天才的な才能を発揮すると、国は凄まじい勢いで発展した。
国民からの信頼もあつく、全て上手くいっていた。
が、ある日突然王女の殺害予告が出回り、そこから少しずつノクターナルはおかしくなっていく。
最初は噂程度だったが、月日が経つにつれ国民は犯人探しを始め小さな小競り合いが増えていった。
そしてそれは暴動にまで発展し、今やノクターナルの街中は荒れ果ててしまったのだ。
「つまり、殺害予告から国民の王女がいなくなる不安が一気に膨らみ、皆さん疑心暗鬼になっていったと言う事ですか?」
フランが、眉をひそめながらダンに尋ねた。
「はい、アズリエルがいなくなれば国が衰退していくのは間違いないですから。ノクターナルはもともとあまり豊かな国ではなかったのです」
「確かにここ数年の発展の仕方は異常と言える程の進歩だったよね。でも、なんで王女様は他国の援軍を自分から無くすような命令をしたの?」
「アズリエルが秘密裏に手に入れた情報では、殺害予告の犯人が裏で各国に根回しをして裏で暗殺の依頼をしていると言った事がきっかけです」
クリスの質問にダンは、はっきりと答える。
話し方や雰囲気からも嘘をついている様子はないだろう。
「王女様自ら……というのは、本当に間違いないですか?」
フランが少し気まずそうに、ダンに聞いた。
この様子だど、勘が良いフランは何かに気づいた様子だった。
「はい……だから私達騎士団はすぐさま各国に兵を派遣したのですが……どうやら何者かに操られ、自分達で己の首を絞めてしまったようです……」
ダンが悔しそうに、机を叩くとラルカも悲しそうに下を向いた。
「大体の話は分かった……とりあえず俺達も少し打ち合わせをしたい。
宿を紹介してくれると助かるんだけど……」
一度ケルベロスで、状況を整理する必要があると判断したバルトは、ダンに当面の滞在先の紹介をお願いした。
「宿ですか……今のノクターナルの市街はあまり治安が良いとは言えませんので、我が城でお過ごしいただいてはいかがでしょう?」
「それは助かるけど、流石に申し訳ない」
そう言いながらバルトはダンに近づけと、肩に手を置いた。
『街中を見て、店の雰囲気とか女の子の感じを把握してぇんだよ。城から出せ』
『その必要はないんですよ……国が管理してるため、城の敷地内にあります』
「外は危ないから、お言葉に甘えよう」
バルトはダンの申し入れを、秒で受け入れた。




