四章 希望的違和感
「圧倒的に情報が無さすぎる」
バルトはリビングで椅子に座り頭を抱えた。
この3日間ミルコとフランに、魔王の情報を集めて貰ったが殆ど役に立ちそうなものはなかった。最初から有力な情報は期待していなかったが、バルトの期待を大幅に裏切るものばかりで、バルトはため息をつく。
「買い物に来ていたとか、果物が好きとか、意味が分からない情報ばかりね」
リリィがバルトの向かいに座り、弓の調律をしながら情報が書かれた紙をみた。
「簡単にはいかないか……そう言えばハンナとクリスは?」
バルトはマンドラゴラを撫でながらリリィに聞いた。マンドラゴラを撫でると、キモ嬉しそうな顔になるのがバルトは気に入っている。
「ハンナは教会のシスターに何か聞きに行くって言ってたわ。クリスは師匠と食材の買い物よ」
「そっかぁ……本当どうしたもんか……」
バルトはマンドラゴラを見ながら、またため息をつく。
「バルトらしくないわね。どうせバルトの作戦なんて、作戦と呼べる様なものではないのだから、あってもなくても変わらないわよ?」
リリィが弓の調律を終え、空間魔法で出した穴に弓をしまった。
「失礼なやつだな、俺はみんなの安全を考えてだな……」
「最初からバルトを信用してるから、どんな展開になろうと皆、心配してないわ。始まってしまえば案外何とかなるものよ?」
バルトの言葉を遮り、リリィはキッチンへ行ってしまった。
「あれは励ましてるのか?それとも貶してるのか?」
「正解は、貶しながら励ましているだな」
「そうか……うお!いきなり横に現れるなよ!」
いきなりキースが横に転移していて、バルトは驚いた。
「私達の仲だ、気にするな!」
「お前、人と会話するの初めて?キャッチボールって知ってる?」
「それより、魔王のいる場所が分かったぞ」
「だからキャッチボ……まじで?」
「私は嘘はつかない主義だ。北の外れにある遺跡にいると思われる」
「本当に3日で見つけるとは……一体どうやったんだ?」
「3日で見つけろと言ったではないか!思い当たる所全てに転移しただけだ!」
「思い付いた場所全てって……やっぱりバ……凄い能力だな」
「当たり前だ!私に不可能はない!」
キースが変なポーズを取り、ドヤ顔をしている。
「それで、どんな状況だった?」
バルトは何事もなかったようにキースに尋ねた。
「うむ……遺跡の周りには魔物が大量にいたぞ。魔王らしき者の姿は見えなかったが、あの魔物の数から見てあそこが本拠地で間違いないだろう」
「状況証拠だけど、今のところ一番有力なのは間違いないか……そこまで俺達4人を転送出来るか?」
「問題ない……と言いたい所だが、魔力の回復を待ってからになる。明日の朝には可能だ。それと、一つ条件がある」
キースは何事もなかったかのように、変なポーズをしたまま答える。
「条件?なんだ?」
「私も同行させて貰う。確かめたい事がある」
「確かめたい事……なんだ?」
「カシウス副団長に聞きたいことがある。君の話だと会話は出来るんだろ?」
「あぁ、出来る。でもあいつはもう……」
「分かってる。ただの私のわがままだ」
そう言うとキースは変なポーズを止め、話を続けた。
「私にはどうしても気になる事がある。あんなに正義感に溢れ、聡明で強かったカシウス副団長が魔王に屈するとは思えない」
「気持ちは分かるが……実際に俺はそれを確認した。今頃完全に人間じゃなくなり、理性を失っていても不思議じゃないぞ?」
バルトがキースに言いずらそうに答える。
「なら、何故君達をあの場ですぐに殺さなかった?魔王からの命令と言っていたらしいが、それはカシウス副団長がこのような状況にする為に誘導したのではないか?
本当に我々の敵になったなら、カシウス副団長は間違いないく君たちをあの場で殺している」
「都合良く考えすぎだ……とは言いきれないな。戦力が増える分俺達も助かる。明日の朝出るぞ」
バルトはそう言うと、キースに自分の剣を渡した。
「剣なら自分のが……この剣どこで見つけた?」
キースが驚いた表情でバルトを見る。
「フランちゃんから貰った」
バルトが悲しい笑顔で答えた。
「こんな家宝のような剣を!……あっ……なんだ、まぁ、うん……」
キースが珍しく動揺している。フランの性格を知っているから大体意味がわかったのだろう。
「俺が持っているより、お前が持っていた方が役に立つからな。後お前も指名手配されてんだから、今日はここに泊まれ。
ミルコさんには俺から言っといてやる」
「なら、私も一言礼を言いに行かなければなるまい」
「店が閉まってからにしろ。誰がどこで見てるか分からないんだから」
「それもそうか……騎士団員に見られるわけには……」
「「「騎士団だ!店の中を見せてもらうぞ!」」」
言ってるそばから騎士団がミルコの店に詰めかけてきた。
「いきなり来て何ですか?一体何の容疑でしょう?」
店の方でミルコが時間を稼いでいるのが分かる。
「勇者様から報告があった!お前が指名手配されているケルベロスの一味と、騎士団員キースを匿っているとな!」
「何かの間違いじゃないですか?そもそも何で私がそんな輩を助けなくちゃいけないんです?」
「黙れ!良いから早くそこをどいて、中を見せろ!」
「別に良いんですけど、中が少し汚れてまして……片付けても宜しいですか?」
「駄目に決まってるだろ!あと、無駄な事はするなよ?周りには騎士団員を大量に配置している。逃げられないようになっているからな!」
「そう言われましても、このままではお見せすることが出来ませんし……」
「良いからそこをどけ!このまま抵抗するならお前も罪に問われるぞ!」
ミルコが時間を稼いでくれているが、もう限界に近い。
「キース!転移出来ないのか!?」
「無理だ!俺が今魔法を使えば、騎士団員の感知専門の隊員に気付かれてしまう!それが逆に証拠になる」
「私に任せなさい。バルト達は中で静かにしてて」
リリィがバルトとキースの間を通り、店に向かう。
「おい!リリィ!」
バルトの声に軽く手を上げ、リリィは出て行ってしまった。




