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二章 知りたい答えと知らない答え

 

「ちっ……あの受付の女意外に強いんだけど」


「確かにあの強さで、何故受付嬢をしているのか分かりませんわね」


「そうかしら?魔術が独特で扱いづらいだけだと思うけど?」


 クリス達が文句を言いながら帰って来た。

 意外に仲良くやれてるのは安心するけど、こいつらギルドで何してきたんだ……


「帰って来てすぐで悪いが、俺はあなた方に聞きたいことがあります。座ってください」


 バルトはリビングにきた3人に着席を促した。


「僕先に片付けを……」


 クリスが気まずそうに逃げようとする。


「私も少し片付けが……」「服を脱ぎたい……」


 2人もクリスに合わせて部屋へ帰ろうとした。


「駄目です。後リリィは話が終わっても脱ぐのは禁止です。さっさと座ってください。パーティーで隠し事は命に関わります」


 バルトは死んだ魚の目をしながら、3人を止めた。3人が気まずそうに椅子に座った。


「まず始めに……このパーティーランダムじゃなくて仕組まれてるよね?ランダムにしては他のパーティーより戦力が高すぎる。明らかにおかしい」

 

 ……………………


 気まずい沈黙が流れる。


 素直に答えるなら、最初から言ってるか……


 恐らくこのままでは、話が進まないのでとりあえず疑問を全部言っておく事にした。


「そして恐らくこの一軒家も何か裏があると思う。いくら寮が空いてなくても、この家は新入りパーティーにはあまりにも立派すぎる」


 3人の顔色を伺うと、ハンナの目が異常なスピードで左右に動いている。


 ハンナさん……分かりやすくて助かります。


「はぁ……バルト君のそういう勘が良いところ、好きだけど嫌いだな」


 クリスがため息をついた。


「いやいや、普通にこのレベルは、誰でも気付くって……それで説明してくれるのか?」


「まぁ、別に隠すことでもないからね。僕がバルト君と同じパーティーにしてくれる事を条件に、ギルドに入ったってだけ」


 クリスは俺を、前から知っているのか?

 すぐにでも聞きたかったが、話がややこしくなりそうな気して、とりあえずは話を進める事にした。


「……気になる事はたくさんあるけど、先に聞いておく。家はどういう理由だ?」


「それも僕。一緒に生活することも条件にしたからね。ただ、一つだけ僕の予定になかった事があったけど……」


「予定になかった事って?」


「全く同じ日に、ハンナとリリィも同じ条件でギルドと交渉して契約してたって事。今日の朝、新居に寄った時に分かったんだよ」


 ん?つまりどういうことだ?3人とも俺を知っている?


 俺の知らない3人が、俺とパーティーを組むためにわざわざ無名ギルドに入った。

 しかもギルドにそれだけの交渉が出来るほどに優秀な人材なのに。


 いやいやいや、意味が分からない!


「すまん……本当に意味がわからないんだが」


「私もですわ!本当なら今頃バルトさんと2人で新生活をスタートさせるはずでしたのに」


 いや、そういう意味じゃないんだけど……


「別に良いんじゃない?一軒家なら自由に服も脱げるし」


 いや、それはリリィお前だけだぞ……


「とにかくこれで隠し事はなくなったわけだし、改めて宜しくね」


 クリスはすっきりした表情で笑った。


「すまん。経緯(いきさつ)は分かったけど、何で3人とも俺の事を知ってるんだ?申し訳ないけど、全く身に覚えがないんだけど」


「だろうね……バルト君みたいな人間は出会いが多すぎる。」


「確かに……バルトさんは基本お節介ですから」


「バルトは基本的に自分の目的以外は、蛇足みたいな考え方でしょ?」


 く、悔しいが言い返せない……


 フランみたいな件には子供の頃からかなり色々首を突っ込んでいる。

 別に理由はなかったのだが、強いて言うなら俺の精神年齢が大人だったからだ。


 体は子供でも、思考は大人だ。


 大人の目で見る子供同士のいじめや、理不尽なからかいは、あまりに幼稚で見ていられなくなる。


 だから正義感と言うより見過ごす罪悪感を消す為に、俺は大人の思考を武器に色々首を突っ込んできた。

 そして正義を貫く信念みたいな立派な考え方ではないから、正直殆ど覚えていない。


 というよりは、サキュバス店への執着が凄まじくそれ以外は記憶にないのだ。


 いくら必要か、サキュバスに指名制はあるのか、平民は入れるのか、時間制なのか、何人いるのか。

 毎日小さい頃からそんな事ばかり考えて生きてきた。


「おっしゃる通りです……あの……」


「聞かないとは思うけど、いつ、何の、誰ですかとか言わないよね?さすがに僕も怒るよ?」


 クリスが笑顔でバルトの質問を遮った。


 あ、あぶねぇ!今聞こうとしてた!


「私もそれには同感ですわ。少しバルトさんは考え方を改めた方がよろしいです」


 ハンナも口を尖らせながら怒っている。


「私は別に話してもいいけど、服を着せた罰として言わないわ」


 リリィ、それは俺の意見じゃなくてパーティーとしての意見だぞ。


「分かった。思い出せなくてすまん。けど、俺が何かをしてみんなの人生が良い方向に向かったなら良かったよ。あと、なるべく思い出せるようにする」


 バルトは本心からそう思う。


 罪悪感からのスタートでも、俺が何かをして誰かを救えたならそれはそれで悪い事ではないはずだ。


「仕方ないなぁ。じゃあ一緒にお風呂で許してあげるよ」


 クリスが少し嬉しそうに言った。


「クリス!?あなた一緒にお風呂だなんて…あれ?別に同性なら…………はっ!バルトさん私のマッサージの約束が先ですわ!マッサージを今すぐしてください」


 ハンナが慌ててバルトに詰め寄る。


「バルト約束は守って欲しいわ。今すぐ脱がせて頂戴」


 リリィがバルトに服を脱がせるように指示する。


 また始まるよ……ほっとこ……


「風呂は疲れたから1人で入る。マッサージは時間の約束してなかったから、来年な。そもそもリリィとそんな約束してないから。じゃ、また明日。物は壊すなよー」


 そういうとバルトはリビングを出て、自分の部屋に戻った。


「あれ?そういえばあいつら本当はどこに就職する予定だったんだ?………まっ、いいか」


 バルトは少し疑問に思ったが、初任務の後で疲れが押し寄せてきていたことでめんどくさくなり、考えるのをやめた。


 ベッドに倒れこみ、バルトはすぐに寝てしまった。

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