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二章 壊れ物注意

 パーティーの方へ戻ると、3人ともすでに魔物の討伐を終え戻ってきていた。


「え!?もう倒したのか?」


「そんなに強い魔物じゃなかったからね。10分もあれば十分だよ」


 クリスが当たり前のように答え、残りの2人も同意している。


「魔法を使ってくる時点で中級レベルの魔物だぞ?さっきから思ってたんだが、お前達強すぎないか?

 なんかこんな小さなギルドの冒険者ってレベルじゃない気がするんだが……」


「そ、そんな事ありませんわ!バルトさんの指示が的確でしたから、何とか勝てましてよ?ねぇ、クリス?」


「そうだね。たまたま魔物との相性が良かっただけだよ」


「2人の意見に同意ね。それよりバルト、何故あそこに指揮官がいるのが分かったの?」


「あ、僕も気になる!」「私も気になりますわ!」



 ……….……….




 こいつら、絶対に何か隠してるな……


 なんでさっきまでバチバチにやりあっていたのに、いきなり意見が合うんだよ……


 でも、この感じだと問い詰めても吐かなそうだし……とりあえずは今は引いておこう。



「別に難しい話じゃないよ。魔物自体見えない所から遠距離攻撃をしてくるような知能はないだろ?だから多分指揮をしているやつがいるって思っただけだ」



「それは分かるけど、何で右の崖の上にいるのがすぐに分かったの?」



 クリスが不思議そうに聞いてくる。



「最初から絶対いるって分かってた訳じゃない。

 ただ、魔物みたいなレベルのやつに俺達の場所を伝えるには、魔法で指揮官と視覚共有する以外不可能だと思ってさ」



「確かに……魔物は言語を使用しませんからね」



「視覚共有してたら俺達の攻撃は当たらないし、敵の戦力もわからない以上下手に動けない。だから高いところから指揮をしてるやつを始めに倒す前提で動いただけだよ」


「……まずは僕の使い魔をランダムに出して魔物が隠れている森を荒らす。異変に気付いて指揮官の目線が外れた隙に矢を放つ。次は四方に飛んでいく矢に注目するはめになる……ってことかな?よく思い付いたね」



 クリスは感心しながら、バルトに聞いてきた。




「その通り。しかも矢は魔物を追尾してるかのような動きをしてるから、迂闊に魔物も動かせなくなる。クリスさすがだな」


 バルトがクリスを誉めると、ハンナが悔しそうに睨んでいる。


「バルトさん!私が、皆さんをお隠ししたのは、敵から見えなくする為ですわね」


 ハンナさん……目をキラキラさせてますが、それは当たり前の事を大きな声で言ってるだけですよ?


「そ、そうだね。指揮官に俺達がどこにいるかわからなくしたかったからね。そして俺の土魔法で、3箇所あった崖に土人形で俺の分身を作って外に出たと錯覚させたわけだ。ハンナもさすがだよ」


 ハンナは嬉しそうにニコニコしているが、クリスが「ちっ……天然処女めんどくさい……」とぼやいていたのは、聞かなかった事にした。


「後は見ての通り。右上の崖で戦闘音がしたから、そこをリリィに射撃してもらった。予想通り指揮官は倒せたし、遠距離攻撃も止まったから残りを始末するだけって流れだ」


「バルトは頭が良いのね。それで私はいつ服を脱いで良いのかしら?」


 リリィは水着の上に手をかけていた。


「そんな話は最初からしてない、脱ぐな。ただ、一つだけ気になったことがあってさ……指揮をしていた魔物が杖を持ってたんだけど、騎士団の紋章が入ってた」


 バルトは言おうか迷ったが、パーティーで状況は正確に理解しておいた方が良いと思い魔物の話をすることにした。


「騎士団?確かにそれは少し不自然だね……」


 クリスが首をかしげた。


「だろ?拾った可能性もなくはないけどさ…それにあの魔物には知性が多少なりともあった。それもかなりの異常事態だし」


「普通に考えて何か裏があるわね。私達が知りえないレベルの裏でしょうけど」


 リリィが服を脱ぎながら、答えた。


「だから脱ぐなって!このまま馬鹿正直にギルドに報告すれば、下手したら厄介事に巻き込まれるかもしれない。とりあえず今はここだけの話にしておこう」


 そう言いながら、バルトはリリィが脱ぐのを止めた。


「あら?興奮しないの?」


「大切なのは、チラリズムだ。裸であれば良いなんてレベルの低いやつと一緒にするな」


「チラリズム?よく分からないけどバルト、あなたやっぱり変な人ね」


「お前には言われたくないよ……」


 リリィは脱ぐのを止め、少し嬉しそうに笑った。


「とりあえず今は一旦ギルドに帰ろう。みんなの強さは分かったし、目標も無事に達成出来た。実は俺、早めに帰って部屋の片付けをしたいんだ」


 まだ昼過ぎくらいだが、バルトは早めに帰りたかった。なぜなら、今日から念願の独り暮らしが始まるからだ。


 この国では15歳になると、自立するために親元を離れなくてはいけない決まりがある。


 バルトも例外ではなく、ギルドの寮とはいえ今日から独り暮らしをするのだ。


 実家が嫌いなわけではないが、前世で独り暮らしをしていたこともあって独り暮らしを楽しみにしていた。


 今日からは人の気配に怯えることなく……ふふふ……最高ですか?最高です!


「バルト君の荷物そんなになかったけど?一時間もあれば片付くんじゃない?ハンナ、ヒール下手くそでまだ痛いんだけど」


 クリスがハンナに悪態をつきながら、バルトに話しかける。


「え?なんでクリスが俺の荷物の量を知ってるんだ?」


「朝見たからだけど……え!バルト君それも聞いてないの?」


 クリスは少し驚いていた。


「話が全く見えない……つまりはどういうことだ?」


「寮がいっぱいだから、僕達のパーティーはルームシェアで一軒家に住むんだよ?」


「え……ま、まじで?」


「うん、残念ながらみんな部屋はバラバラだけどね。別に同性なら問題ないって言ったんだけどなぁ」


「同性でも、変態は問題ですからね。それにヒールは成功してます」


「あ?処女膜が何か話した?」


「すみません、変態語はよく分からなくて」


 ハンナとクリスがまたギャーギャーやっていたが、バルトの耳には一切入ってこなかった。






 バルトの頭の中で一つの公式が生まれた。


 同僚≠恋人+共同生活=生地獄(おしまい)







 バルトはその場に崩れ落ちた。


「ちょっ!バルト君!?大丈夫?」


 クリス達が慌てて駆け寄ってきた。


「あ、あぁ……少し驚いてしまって。大丈夫だ」


「疲れているなら無理はしないで。肩貸すわよ?」


 リリィがバルトに手を伸ばした。


 落ち着け、落ち着くんだ俺。まだ焦る時じゃない。


 自分の部屋はあるわけだし……プラスに考えよう!じゃないと本当に心が折れてしまう。


 バルトは心を落ち着け、リリィの手をとった。


「ありが……」


 リリィはいつの間にか服を脱いでいたらしい。


「あ……あぁ……あ……こ、心が本当に壊れちゃうぅぅぅぅぅ!!」


 バルトは泣き叫びながら、一人ギルドまでダッシュで向かった。

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