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その5

 メイが古の青龍に尋ねた。

“祭ちゃんと鈴露を無事に結婚させてくださるための条件とは?”

“簡単なことじゃ。おまえはミコトを開きたい。ミコトについて知らねばならぬ。このままずっと清流旅館に留まれ”

“留まる?”メイは首を傾げる。

“若青龍に、清流旅館の女将になると言ったそうではないか”

“ええ、まあ…”


“では、女将修行をいたせ。ミコトを知り、寄り添えるように。ああ…恋愛感情のあるなしは関係ない。ここは、共通の目的に向かう同志でよい”

“…そういうの、逆に胡散臭くないですか”

“では、このまま去るのか? あの状態のミコトを置いて”

“そんなことはできません! さっきの史緒おばさまのお言葉も気になりますし…”


“あの様子だと、書の姫もしばらくここに留まるであろう。様子を見るには好都合”

“史緒おばさまはなぜ鈴露に対して、あれだけお怒りになったんですか?”

“京都勢は一条と仲が良いわけではなかったからのう。他を治外法権的に排除していたのは、元はと言えば一条のせいだ”


“一条のせい?”

“当時、トップにいた一条が、自分たちを守ってはくれないと判断した九条が、他をまとめて独立的な形を取った”

“自分たちを守ってはくれない? どういうことでしょう?”

“鈴露の祖父の凛。その祖父にあたる央司は、養女の澪を守るため、伊勢の組織と密約を結び、“命”の地位を退き、妻と二人でハワイに行ってしまった。息子の誠が“命”となったが、そのなりゆきを知らされていなかった京都勢には不信がつのったというわけだ”


“つまり、当時の九条家、史緒おばさまのお父様とお姉さまが、そのとばっちりを受けたということでしょうか”

“然り”

“いろいろな因縁があるんですねえ…”

“真大祭で流すべきものは多くある”


“あのー、ところで、こうして私とお話してくださっているということは、古の青龍さまは復活されたんですか?”

“おまえとの会話は復活には当たらぬ”

“宝箱の神箒で眠りにつかれているというお話だったような?”

“そうじゃ。我はまだ眠りについておる”

“それって…夢遊病みたいなものですか?”

“…わかりやすいのであれば、その解釈でよい”少々不機嫌そうな声になる青龍。


“でも、自由がきくなら、そのまま眠りから覚めてしまわれてはどうでしょう。ミコトさんを開いて、そのミコトさんの力を使うなどという、回りくどいことをなさらなくても”

“神事というのは回りくどいものじゃ。そして、人の心と暮らしはそれ以上に回りくどい”

“うわあ。神様っぽいお言葉ですねえ”

“ぽいではなく、神じゃ!”


“それで、何をもって古の青龍さまは復活したことになるのですか?”

“真大祭にて清流旅館と周囲に積もったもろもろを流し終えた時、我が復活となる”

“さっきのように、ミコトさんを蝶から守るお力があっても、それでは足りないということですか?”

“真大祭にはミコトの力を要する。それだけじゃ”

“そもそも論になるのですが…そのミコトさんの力を開くのは、私なんですよね?”

“もう行かねばならぬ”


 古の青龍の気配が消え、メイは思わず叫んだ。

「まだお答えをいただいてません!」


 部屋にいた者たちの視線がメイに集まる。

「あ…えーと…」


 メイが何と言っていいのか困っていた時、龍の前に横たわっていたミコトが、ゆっくりと目を開け、起き上がった。


  *  *  *


 その頃、駆の部屋では、史緒、祭、大地、駆、深潮が話し合いをしていた。

 正確には、祭が史緒に懇願していたといったほうがいい。

「鈴露さまにも少々焦りがあったのだと思います。ですが、それは決しておにいちゃんをいいように使おうという気持ちではありません」

 大地が祭の肩に手を置きながら尋ねた。

「どうして、そう言い切れるんだい?」

「それは…」唇をかむ祭。「鈴露さまをお慕いしているからです」


「その鈴露さまは、私たちを追っても来ませんでしたが」

「おかあさま!」深潮が珍しく強い口調で言う。「利用されてもかまいません。鈴露さまのお力がミコトを救えるのなら」

「深潮…」

「深潮、おまえの言うことはもっともだよ」大地が微笑む。「今まで離れていた時間の多かったミコトを、これからは幸せにしてやりたい。私だってそう思うよ」

「おとうさま…」涙ぐむ深潮。


「だが、今の鈴露さまのお力では、今のミコトを救うことは出来ない。そうだろう、駆くん?」

 問われた駆はうつむいたまま答えた。


「むしろ、妨げになるかと。それが龍の宮様の答えです」


  *  *  *



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