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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
66/67

presentー恋文

From that one year later―――


7月30日




(あたしは未だにナツの死を受け入れられないでいる)



(ナツのお葬式には行かなかった。正しく言えば行きたくなかった)



(約一年経った今でも時折、TVで唄うナツを目にする)



(いつも同じシーンなのは発表されたのが1曲だけだから)



(変化の無いナツなのに、それでもあたしは、

「ナツは生きてるんだ」って思いながら今日までやってきた)



(季節の移ろぎさえ気付かないまま、呼吸し続けた)



(あたしは今日、また1つ歳をとる。そしてこれから先はアナタより歳をとって、お婆ちゃんになっていくの)



(そんなになってもあたしはアナタを想い続けるでしょう)




 

ポストに郵便物を取りに行くと、白い封筒が1つ。



(手紙?)



差出人は書いてないが、宛名はミカン。



(誰だろ?)



リビングのソファにユックリと腰を沈め、1つため息をつく。



(はぁ、何だか今日はやりきれない)



そう思いながら封を切り中から便箋を取り出した。



(えっ!?)



そこには、懐かしい文字がびっしりと並んでいた。



深愛なるミカンへ


あれから7度目の夏が巡ってきました。憶えてくれていますか?



突然こんな手紙が届いてきっと驚いてる事でしょう。


だって俺はこの世界にいないハズだから。



これは遺書じゃなく、恋文と思って読んでくれたら。



ねぇミカン?

何から話そうか?


君は俺に出逢えて良かったと言ってくれるだろうか?

そんな事を繰返し思ってたんだ。


ねぇミカン?

俺の唄は君に何かを残せただろうか?

答えをその口でその声で聞けたら。


ねぇミカン?

たぶん俺は

春には春風になって、君の足下に素敵な花を息吹かせ

夏には蝉になって、夕暮れには鳴き時雨

秋には街路樹になって、目を奪う程の彩付きを見せ

冬には真っ白な綿雪になって、その小さな手のひらにそっと落ち

そうやって君に気付いてもらおうとするだろう。


でも、一切それに気付かないで。これ以上傷付けたくないから。


少しずつ、少しずつ俺を忘れてしまえばいい。


居なくなった人を忘れる事は出来るから。


ねぇミカン?

生きてくのがこんなにも苦痛なんてね。

哀しい事が多すぎて、少し泣き疲れたみたいだ。 


ねぇミカン?

今君を呼んでみた。何度も何度も呼んでみた。



一生ミカンを呼び続けたかった。


ねぇミカン?

本当はもっと聞いて欲しい事があるんだ。

でもきりがないからこの辺にしとく。



君のいない世界はどんな所だろう?


いつか、その世界がまた君のいる世界になる日を待ってる。


ミカン、愛してるんだ。

この世界中の誰よりも。 


中澤 夏月






P.S


最後にプレゼントを用意したんだ。

この手紙と一緒にサリー達が上手くやってくれるハズなんだけど。













手紙を読み終えたミカンの顔は、グチャグチャに泣き崩れていた。



「ありがとぉ。ごめんねぇ、ナツ」







 

(あの日あたしは本当の自分の居場所を放棄した)



(そこは、ナツの腕の中)



(あそこだけが自分の居場所だったのに)



(あたしの選んだ1/2の選択はナツの幸福ではなかった)



(そぅ、あの時繋いだ手の先がアナタじゃないと駄目だったのに)


(もう一度あの日に、、、。)


(考えるだけ無駄なのに)



(それでもこの世界は知らん顔でグルグルと回り続ける)



(そしてあたしは、振り落とされないように、必死にしがみついて生きていく)



(そんな生き方もあるのでしょう)










その日、shellyの2ndシングル『キミノイナイセカイ』が発売され、オリコンチャート初登場1位を獲得した。










(生きて欲しかった)



(憎まれ、恨まれてでも、それで生への執着が起こるのなら)







 

(寒い夜にはアナタの隣りが温かかった)



(アナタの隣りはやっと見付けたあたしの居場所だったのに)






(ねぇナツ?

あの日の夜、アナタに付けた心の傷はまだ痛みますか?)


(あなたにただただ愛されていた日常。今思えばあたしは幸せでした。)




(あたしもアナタを愛してます)




美しい夏の月が星空にぶら下がっていた。


      fin.

長い間、お付き合い頂き本当に有難うございました。

 

お陰様で無事完結させることが出来ました。

 

さて、皆様の予想した終わり方だったでしょうか?

 

是非、感想を頂ければ幸いに存じます。

 

本当に有難うございました。

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