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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
53/67

Cageー刺青慕情

不埒な夏が惜しむことも無く熱線を撒き散らし


あれだけ近くデカかった灼熱の太陽は小さく遠のき


焼けたアスファルトの匂いも懐かしい秋へと移ろいだ。




ナツとコヤジは毎週あるビルへ通っていた。


その中の一室。


ナツは上半身裸になり、汗臭く汚い布団の上にうつ伏せている。



部屋中に反響する機械的な音。



まだ若い20代の作務衣を着た男がナツの背中の上で手を彷徨わせている。


作務衣の男は右目の下に涙マークを彫っている英太郎という彫師で、ナツとコヤジの2人に刺青を彫っていた。


ナツの背中に描かれていく、月下美人[夏の満月の夜にだけ数時間咲く花]と鳳凰が少しずつ完成に近づいてゆく。


額を走る汗。


刺す針は容赦なかった。


その痛みを例えるなら、錆びきったカッターで刻まれている感じ。


しかし、その痛みを持っても心の痛みには、これっぽっちも届かなかった。



目を閉じて、唇を噛み、痛みを求めるかのようにジックリと味わう。


「大丈夫?もう止めとく?」


英太郎が気遣う。


「まだいけます」


ナツは完成を急いだ。


1日でも早く自分を変えたかったから。


部屋の中は、いつの間にかトランスが流れていた。


(あっ!?この曲)



南が好きだった曲が流れ出した。


(南、どうしたら俺は変われるかな?なぁ、教えてくれよ)


ナツの目に光る物を見た英太郎


「痛かった?」


「いえ、汗が入っただけっす。気にしないで下さい」




こうして2人は極道の道へ一歩踏み出していった。

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