Separateー別れる場所
「何か今日、おかしくないか?」
「.....話たいこと....あるの」
ナツの表情が瞬時に強ばる。
過去にもこの戦慄の緊張を何度か経験してるから。
ミカンが次に何を言おうとするかが容易に察しがつく。
もしも、そのセリフを言われてしまえば
「分かった」と優受してしまうであろう自分。
そうならないためにも
必死に仮初め(その場凌ぎ)の言葉をまくしたて足掻く。
「取り敢えずベンチに座ろっか?」
「雨降りそうだし、その辺の店に入る?」
「ここに居たら人の邪魔になるぞ?」
空し過ぎる時間稼ぎ。
堪らずミカンが声を荒げた。
「ちゃんと聞いてっっ!!」
どう足掻いても無駄だと黙る。
そして、悲嘆のダイス[賽]は投げられた。
転がって行く荊[いばら]の坂道が背徳へと続いていくのをナツはまだ見えないでいた。
「いいよ。何?」
「あのね...別れて欲しいの」
覚悟をしていたつもりなのに。
現実は予想以上に重くのしかかってくる。
(こんなのだけが、予想を裏切らない)
「なぁ、何でそんな話をこんな場所でする訳?おかしいだろっ!」
言ったとこで、この問いに答えを求めた訳じゃない。
ただ何かを言わずにはいられなかった。
しかしミカンがこの場所を選んだのにはハッキリとした理由があった。
2人きりだときっと泣いてしまう―
これだけの雑踏の中なら泣くのを堪えられると思ったからだった。