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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
35/67

Destinyー刹那くて

ある日


ミカンが出窓に座ってマニキュアを塗りながら話し掛けた。


「ナツって、すごい優しいよねぇ」


『優しい』という言葉に過剰に反応してしまうナツ。


「そりゃ、ミカンだから。誰にでも優しい訳じゃねーよ。」


「ふ〜ん。そっかそっか」


無垢なミカンの笑顔を見てナツは満たされいく。


時間があって無いような、マイペース過ぎるミカンとの日常。


「何かぁ、倖せだよね?」


「まあね」


「明日もいい日だといいねぇ」


ミカンの口癖。




(明日も明後日もたぶんいい日だよ)


言おうと思ったが、照れ臭くて含み笑いした。




1日1日が刹那かった。




(時間のスピードは本当に一定なのか?)



猜疑してしまう位に。


1日、1分、1秒ごとに、不完全な愛情を2人で積み上げていく。

だから今のナツには、ウ"ァルガー[俗悪]な所が微塵も見られない。



(世界が白ければいいのに)



その中で、ただ自分の直線上に大事な人が誰1人欠けることなく居てくれたらよかった。




 

7月30日―


ミカンの19歳のバースデー。


2人は一緒に暮らし始めた。


「いつも一緒がいいよね」


ミカンの理想を現実へと昇華[あっという間]した。 


寝ても覚めても、そこに愛しい人が居るという毎日。


幸福感、安心感、常楽感。


日々が真新しく、ナツは倖せだと言い切れた。



そして今日、8月24日―



19歳を迎えるナツは、半年前から始めたバーテンダーのバイトを休み、赤い橋へ歩いて向かう。



「たまには、外で待ち合わせて歩いてデートしよ」


ミカンの提案で花火大会に行く事になった。




「花火が消えていく儚さが好き」とミカンは言った。


「なんか虚しくない?」


「違うよ。花火は消えていくから綺麗なの。人もそぅ。いつかみんな死んじゃうから、綺麗な花を咲かせたいって思うんだよ?それって虚しいこと?違うでしょ?儚いからこそ輝きは増すんだよ」


ミカンの純真さが心に染みた。




(ミカンはバイトが終わり、もう橋の上で俺を待ってるだろう)

そう思うとナツの足取りは自然と早くなって行く。 


ナツは待ち合わせの5分前から、いつも最上の幸福を感じる。


あと5分


3分


1分


30秒


10秒


ミカンが手を振った。


5秒


3秒


1秒


その手までもう少し。


繋いだこの手の中には、持てるだけの情熱と未来を詰め込んだ。

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