Destinyー出逢えた2人
洗面台の鏡を覗く4人。
「そろそろ変装した俺らお払い箱だな」
ヒゲを剃り始めるアユム。
「マンゴーはないっしょ!?意味分かんねーけどあれセコいね」
「やばかったんですけどぉ、マジで」
皆それぞれ、服を着替え、シャンプーで黒染めを落としていく。
その中でハチベーだけは何も変化がないままだ。
身仕度を整えると
「さぁ、MVPを決めてもらいに行きましょっかね!?」
「負けねぇよ」
4人は洗面所を後にした。
洗面所にはハチベーが
「せめて」と奮発した
「タクティクス」の香りが漂っていた。
アユム達が部屋に戻ると
「あの、部屋違いますよ。あっ。でも、この際居てくれた方がいいんですけどー」
目を輝かせながらマキが言う。
「アユムですけどー」
「マーサ君でーす」
女の子達は目をパチパチさせながら互いを見回す。
裕子だけが1人で笑った。
「取り敢えずぅ〜。マンゴー食べとく!?」
女の子達は
「マジ!?」と驚きが隠せない。
「ごめんよ、騙しちゃって」
アユムが言うと
「もしかして、アユム君とマーサ君てぇ、PCPの?」
マキが訊ねた。
「ピンポ〜ン。大正解」
「うっそぉ、すごくない!?ヤバイくらいかっこい〜」
マキとサチが両手を取ってハシャギだした。
さっきまでの邪険な空気は霧散し、微塵も無くなった。
それから場が180度反転し、盛り上がり始めた時
「今日、誰が1番キマッてたよ?」
アユムが訊ねると
「マンゴー」
皆口を揃えて答えた。
「よっしゃっ!来て良かったぁ。ゴチになりまぁす」
圧倒的支持でMVPはナツに決まった。
「じゃ、今からがホントの飲み会ね。テンション上げていきましょー!今夜は朝までオールナ〜イッ!!」
アユムがテンションのボルテージを上手く上げていく。
2時間後―
男連中はナツ以外酒に呑まれ、ノリはピークに差し掛かっている。
ナツは端っこに座り、同じ様に落ち着いていたミカンと喋っていた。
「ナツ君あんま呑まないんだね?」
「変装したくて来ただけだからね」
「ふ〜ん。ねっ、女の子に興味なさそうだけど、彼女いるとか?」
「いないよ」
「うそだぁ。そんなにカッコイイのにぃ?」
さっきから一方的に質問されている。
「ねぇ、皆と一緒に楽しまないの?」
「そっちは?」
「ミカンはここでいいの」
「ふ〜ん」
「ナツ君のナツキってどんな字?」
「夏の月。8月生まれで月が綺麗だったからって。俺の親適当だろ!?」
「ホントにぃ?ミカンもね、美しい夏って書くの。すごくない!?何か運命みた〜い」
ナツはミカンの笑う顔をみながら
(なんか不思議な娘だな)と思った。