Destinyー笑えれば
サクラの一周忌が済んで少し落ち着いた頃。
それは予告もなく突然訪れる。
ナツは部屋でナナ吉と遊んでいた。
ナナ吉は高い所から飛び降りると
「ムギュ」っと潰れたような声を出す。
ナツはそれが可愛くて仕方ない。
この1年、仲間とナナ吉にどれだけ救われたか―
しかし、まだ誰かを好きになることは考えられない。
(とにかく今は笑えればいいさ)
そう思いながらナナ吉にマタタビを振って見せる。
甘え声ですり寄るナナ吉。
「お前もジャンキーか?」
笑いながら南とサクラを揶揄(やゆ:からかうこと)出来るようになった。
その時、アユムから電話が鳴った。
「今日さぁコンパあんだけど、どぉ?プリクラ見せてもらったけどアベレージ高いぜ」
自信アリ気な様子が窺える。
「ワリィ!今日パス。ナナ吉と遊んでやるから、別の奴誘ってよ」
「だってサリー女ネタ来ねぇじゃん、コヤジ誘ったら清が呼んでるってコンサート行ったし」
「ハチベーは?」
「あいつはまだ訊いてねぇけど、来んなって言っても来るだろ。女好きだしさ」
「じゃあ、いいじゃん」
「バカ言うなよ。2対2でコンパって言わねぇだろ!?4対4なの。こっちは、俺とハチベーとマーサ覚えてるか?」
「あぁ、タイマン張った奴ね。割と男前の」
「そぉそぉ。んで、今3人なのよ。だからナツに電話したんじゃん」
「正味な話していい?コンパ飽きた」
「ばっか、俺を甘く見んなよ!今日はただのコンパじゃねぇぞ。仮装コンパってどうよ?」
「何それ?もっと詳しく教えろよっ」
「いいねぇ、食い付いてきたねぇ。よく聞けよ」
アユムはナツに計画を説明する。
「行くっ!それ絶っ対ぇ行く。つーか行くっかねぇだろ」
「じゃ決まりね。19時に駅な。バッチリ決めて来いよっ!バーィ」
ナツの心が久々に躍りだした。