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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
28/67

〜Destiny〜そして、その手を

シーサイドビーチでバカンスを享楽していたコケティッシュ[色っぽい]なマーメイド達が荷物をまとめ、飛沫を上げて南国へ向かう。



その飛沫が波紋に変わり、やがて波にさらわれる頃、人の心に微熱を残したまま夏は秋へと移って行く。



18歳を迎えたばかりのナツの所へ、ハチベーが中古で買ったワゴン車に乗って来た。



「すっげぇ!お前免許取れたの!?どっかドライブ行こうぜっ」



この日からナツ達は夏を取り戻すかのように、連日ナンパに繰り出した。



別に女を探す為ではない。


仲間とバカをやって忘れていたい事が沢山有ったから。



ハチベーの車は、持ち主の名前から

「ハチップ」と名付けられ、皆を色々な場所へ運んでくれた。



車内の天井には焦げた[貞子]という字があった。



「ハチベー!この車呪われてんぞっ!!」



納車1日目にアユムがナツを笑わせる為にライターで焼いたのだ。


皆、ナツを必死に笑わせようと躍起になっていた。ナンパは思うより上手くいかなかった。


ハチベーがよくないらしい。



「ねぇ、ねぇ。どっかで見たことない!?」


そんなセリフで引っ掛かるハズもない。



「何やってんだよぉ。ハチベー早く捕まえてきてよ〜。あ"っ!!あの娘、半端ねぇ。よし、行けー」


アユムが帰ってきたばかりのハチベーに催促する。


「またッスか!?今日40人は声掛けたっスよぉ。たまにはアユム君が声掛けたらいいじゃないっスか。文句ばっか言って」


「あ"ぁ"?言うねぇボ〜イ。ジョークはお前の顔で充分間に合ってんだけど、さっ!」


アユムがハチベーの腹を殴った。


「ボディは甘いよ。顔にしな顔にっ」


ナツが笑いながらアユムを煽る。


「あっ、あの娘行ってきまーすっ」


殴られる前にハチベーは慌てて出て行った。


「ガンむかつくよ、ハチベーの奴」


アユムはまだ殴り足りないようだった。



翌日―



アユムがニヤニヤしながら何かを手に持って来た。

「じゃーん!!ハチップにカスタマイズするのに拝借して参りましたっ」


「拡声器!?それで何すんの?」


「これが有ればぁ、女の子は入れ食いの......予定?」


アユムは急いで拡声器をハチップに取り付け、試しに街中に繰り出してみることにした。


いつもより遥かにノリノリなアユム


「ハチベーっ!あそこ行け!!」と女子校生の集団に近付かせるとマイクを掴んだ。


「石焼ぁ〜きいもぉ〜。。。。売り切れっ」


8割くらいの娘が驚きながらも笑う。



「よしっ!コレで掴んだぜ。こっから見とけよ」


ナツに言って、またマイクを掴む。


「オホン。え〜、皆様の薄汚れた街に、もっと汚れたハチベーがやって参りました」


「アユム君止めて下さいよー!恥ずかしいッスよ」


ハチベーがマイクを取り上げようとしたが

「ウルセェ!」と一喝された。


「情熱の男、ハチベー。パンチパーマが誰より似合う男、ハチベー。1分以内にイチゴ牛乳が買ってこれる男、ハチベー。ハチベー、ハチベー、ハチベーでございまぁす。」


女子校生達は皆興味津々そうに見ている。「そこのカワイイおねぇさん。そぉ、今自分に指差したアンタよぉ。ハチベー見てみたいっしょ!?」


「みたぁ〜い」


「OK、ベイベ〜。乗ってけよっ、送ってくぜ」


こうしてアユムの読み通り、1発目から成功したのだ。


「マジかよっ!?」


ナツは驚きながら、一時の歓楽に心を休めた。


アユムのテンションとノリの限界はまだ遠い。




 

ナツはこうして、遅れてきた夏を


思い出さず

忘れきれず


ギリギリのタイトロープの上で、その場しのぎの止まり木を探しながらやり過ごした。

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