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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
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Nightmareーサリー

サクラが居なくなって1ヶ月が経過したが、未だ2人組は見付からない。


(たぶん捕まらないだろう)


ナツはそう思い始めていた。


ナツの左耳には1つピアスが増え、5つ光る。




部屋でボーっとしていたナツの携帯が鳴った。


久し振りのサリーからの電話―


どうするか考えたが、心配させない為に出てみる。



しかし、サリーは心配するわけでもなく


「今バニラ。暇なら来れば」


いかにもサリーらしい。


サリーの軽い言葉に誘われて、重い体を起こすことにした。


店に入るとトムとサリーしか居なかった。


「お"ぉ"、生きてたかぁ?こりゃ今日は仕舞いだな」


トムは[close]のプレートを掛けに行く。



その優しさが心地よかった―




「たまには、ビール以外も呑めよ」


サリーは自分と同じハイボールを頼んだ。


何から話せばいいのか判らないナツ。


サリーと暫く会話がないまま時間が過ぎた。

グラスに当たり

「カラン」と鳴る溶けだした氷の音。


哀しみに溺れるナツの心に冷たく突き立つ。



店内に流れるブルージーなBGMが止むと、サリーは何も言わずギターを手にした。


(左利きのサリーがギターを持つ姿は誰よりカッコイイ)



サリーの奏から生まれ出る、目に見えそうな音の1つ1つがメロウ[柔らか]で心をそっと温めてくれる。


ギターを弾き終えたサリーが隣に座り


「どぉ?1人じゃねぇって思えただろ?」


と笑った。



そう言われたナツは、ようやくポツリ ポツリと語り出した。






「哀しみとか、苦しみとか、痛み、孤独だってアイツが生きていてくれるなら俺が引き受けたって構わないと思ってる。自分の気持ちも犠牲にしてもよかったのに」



サクラに何もしてやれなかったと悔やむナツ。




 

「なぁナツ?人なんて自分が思ってるより何も望んでないと思うぜ」

グラスを傾けたサリーの目尻は微かに濡れ、光っている。


ナツはそれを見て、ここまでずっと堪えていた物が堰を切って溢れ出した。


(ー緒に泣いてくれる奴がいる)


サリーの存在に涙が止まらなかった。



「ちょっと休めば?1人じゃ淋しすぎんだろ?」


サリーはナツの肩を抱いてグラスを合わせた。


グラスの鳴きが音叉[チューニングする物]とシンクロして、ナツの心を震わせた。

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