表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
25/67

Nightmareー桜散る

これで日記は終わっていた。



(サクラは全部忘れられただろうか?俺の事も忘れたかったのだろうか?)



そう思うとナツは場所も気にせず声をあげて泣いた。






そこへ刑事が入ってきて気休めにもならない戯言をナツに向けた。


そして、

「もぅ少し落ち着いてからにしよう」と出て行こうとする刑事の腕をナツは掴む。



「オィッ!絶対見つけろよ!こいつら許さねぇ、ブッ殺してやるっ」と、喰ってかかった。


刑事は、さも馴れたように


「少し落ち着け」

と言って部屋を出て行った。



残されたナツは、まるでドクマ[宗教上の教え、信条]に踊らされた道化師の気分だった。



この1ヶ月サクラは嘘だけで造られていた。


ナツはサクラが死に至るまでのプロセス[過程]を幾つも見落としていた。



サクラの心の痛みが、今更になって必要以上に悲哀のドアを乱打する。






サクラがかつて好きだった赤い橋の上に立ってみる。

(同じ物を見て、同じように感じるのだろうか?サクラの見てた景色は本当にこの景色だったのか?)


答えは南を連れて行った死神が奪って行ってしまった。



「サクラァ、最後に見たこの世界は綺麗だったか?」



そう言ってナツは昔

「この匂い好き」

とサクラがくれたアナスイを餞に岡本川へ手向けた。



「向こうに行ってトルエンの匂いじゃ、南に笑われんぞ」ナツは淋しく笑う。



(南悪い。俺の桜も散ってったわ)


サクラと駆け抜けた、たったの5ヶ月


まさに春の夜の夢。



心の中でナツは、何も出来ないまま大切な人間を2人も喪った悪夢のような事に対しての悔恨の嘆きをリフレイン(繰り返す)していた。


(一体どれだけ強くなればこの悲しみを乗り越えられるのだろう?)



岡本川の水面に写る6月のくすんだ灰色の空。



(落ちてくればいいのに)


ナツは小さく願ってみた。ナツは1人の少女の涙の海に小舟を浮かべ、壊れた思い出という時計の針を巻き戻そうてしてみたが、6月23日以降の思い出が出てこない。



やっぱり悪夢ではなく現実なんだと確信させられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ