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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
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Nightmareー砂の城

南が桜の花を散らしてから1ヶ月。


ナツは岡本川に架かる赤い橋の上に居た。



「こっからの眺め大好き」と言うサクラとの待ち合わせ場所。



もうすぐ待ち合わせのAM1:30。



サクラは歳を1つ誤魔化してAM1:00までキャバクラでバイトしていた。




ナツのポケットから

「DICE」が聴こえる。


ディスプレイには[サリーちゃん]と表示されている。


(おそらく、バニラへの誘いだろう)


そのまま携帯を閉じ煙草に火を点けた。


あの日以来ナツは

「バニラ」には顔を出していなかった。


「バニラ」のあの重たい鉄のドアを開けると南がカウンターに居るような気がするから。




居るハズもないのにー




サリー達ともあれからずっと話していない。



今はまだ仲間には会いたくなかった。


ナツは煙草の煙りを使って、切ないため息を形に変えた。




AM2:00―サクラはまだ来ない。



ポケットから携帯の音が聴こえてきた。



「またかよ」

うんざりしながら携帯を開くとサクラだった。



「おつかれ。遅いじゃん!?...何で暗いんだよ?...ハッ!?ヤッパ今日は無し?何でだよっ?...もぅ知らねぇ、好きにしろよっ!」



サクラは呑みすぎて吐きそうだからと一方的に断ってきた。




ナツは釈然としない。




サクラは何があっても酒を呑みすぎない。


明らかな嘘ー


「何かもう、どーでもいいよ」


1人ごちて、岡本川の清音に7本目のタバコを投げた。




 

この日を境界に、ナツとサクラの間の何かが砂の城みたいに崩れ始めた。



ある時はサクラの服から止めたハズのトルエンが香り


ある時にはナツの部屋に在る物を投げ散らかす、ヒステリックなティンカーベルに化けた。



最初の頃は、(南の影響か?)とも思ったが、どうやら違う。



暴れるサクラをナツが止めようとすると

「触んないでよっ!」と振り払い、一緒にベッドに入っても腕枕を拒むようになった。 


サクラが何かを隠していることは火を見るより明らかだー



サクラは何を訊かれても

「疲れてるだけ。私の事イチイチ気にしないでよっ!」

と強く当たった。

しかし、隣でナツが眠りに就いた後いつも泣き出してしまう。



幸せなハズのナツのベッドの中―




ナツに気付かれぬよう、声を殺して泣く術を無理矢理身につけたのもこの場所だった。



「ゴメンネ」



横で眠るナツに呟いて目を閉じる。


しかし今日サクラはハラハラと涙を流しながら


(隣から聞こえてくるナツの寝息をこれ以上近くに感じては辛くなる)と思い


決断する日が近い事を悟った。


涙の流れる音が聞こえそうな程の静寂が、サクラの胸を刺す棘を凜と鳴らした。

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