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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
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〜still〜何も知らずに

-心に傷がある全ての人に捧ぐ-



深愛なるミカンへ


あれから7度目の夏が巡ってきました。憶えてくれていますか?




〜序章〜


昨夜降った雨に濡れたアスファルトが朝日を受けて、辺りに煌めきをバラ撒いたそんな1日の始まりだった。


女はキッチンで鼻歌を唄いながら朝食の支度に勤しんでいる。


何処にでも在る朝の風景。


(結婚生活も7年過ぎれば、それなりに余裕もでき、立派な主婦になったと言えるだろう。)


二階から男が降りてきた。


「おはよう」


「あっ、おはよう。もぅ出来るから」


そう言って女は皿に盛付けている。


今朝のメニューは


フレンチトースト

ベーコンエッグ

ゴボウサラダ

ブラックコーヒー


男の前にそれらを並べながら女はまだ鼻歌を唄っている。


「今日は朝から機嫌いいね。それ誰の曲?」


「分かんないのよー。TVのCMで流れてるの聴いて覚えたの。いい曲なのよ」


どうやらお気に入りの曲らしい。


男は

「ふ〜ん」と言ってTVを着け、朝食を食べ始めた。


朝食を食べ終えた男は手早く身支度を整え、サッサと会社に出掛けて行った。


女は食器を片付けながら


(ごちそうさまくらい言ってくれてもいいのに)

と思った。


そして


(結婚生活なんてこんなもんよね)


と思い直し二階に子供を起こしに行く。


結婚してからひどい感動もひどい悲しみも皆無と言ってよかった。


ただ、目の前で眠っているこの子が産まれた事を除いては。


「ハーイ、起きなさい」


「う゛〜、クァ〜」


(起き上がる姿まであの人にソックリだわ)


そう思うとこの子が愛おしくて仕方なかった。


子供の着替えを済ませ、朝食を与え、男が着けっ放しにしたTVに目をやった。



どこのチャンネルでも同じネタだから別にどのチャンネルでも構わない。


「ごちそうさまぁ」


食べ終わった子供に歯磨きをするように促し、女は食器を洗い始めた。


その時、丁度お気に入りの曲がTVから流れはじめた。


どうやらニュースの中で流れてるらしい。


(あっ!?)


と思いながらも、時計に目を向けると幼稚園に遅れそうな時間。


TVから聞こえた、アーティスト名と曲名だけを頭に刻み込んでTVを消し、子供を急かし玄関のドアを開けた。


女は子供を送りながら考えていた。


(さっきの曲、昼からの買い物の時に一緒に買って帰ろぉ)


夏の午後の柔らかい陽射しが、心を高揚させていくのが分かった。

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