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ーキミノイナイセカイヘー  作者: 片山水月
12/67

Vanillaー日々の消化

先週から梅雨入りしてよく雨が降る。


今日もする事の無い少年達がバニラで談笑していた。


あの罰ゲーム以降ハチベーも仲間に入り5人で居る事が多くなった。


ハチベーは驚く事にあのスタイルが気に入ってどっぷりとヤンキーに染まってしまった。


しかも蓋を開けてみると結構な饒舌で面白かった。




「ナツ〜、何かねぇ?ヒマヒマヒマヒマァ"〜」


南が壊れ始める。


サリーは奥でギターを弾いている。


さっきから1人で

「チッ、音が出ねぇ」

とブツブツ言ってる。


どうやらピッキングハーモニクスの練習をしてるみたいだ。


コヤジはカウンターの端で携帯の

「東京砂漠」を流しながら唄っている。


どうもコブシが上手くまわらず、さっきから10回位繰り返していた。



ナツと南とハチベーの3人は何かないか思案中だ。


「良いこと思いついちゃったぜぇ。もうすぐ夏だし、お前ら彼女欲しいだろ?」


ウン、ウンと2人共頷く。


「てことで、第1回!告白ズー」



何かよく分かってないが2人は拍手して盛り上がってる。


「いいか?今から俺らでジャンケンして負けた奴が女の娘に告白する。た、だ、し、普通じゃ面白くないだろ?そこで、チョーくっさいセリフで口説くわけよ。どう!?」


「バカか!それで落ちる女なんかいるわきゃねーだろ。何が夏までに、だよ。夏までに女友達潰すじゃねーかよ。ムリムリ」


「ふざけんなよっ!テメェが暇だから何かないかって訊いてきたんだろ。よーするに勝ちゃいんだよ勝ちゃ。なぁハチベー?」


「そーっすよ。南君やりましょーよ」


ハチベーは男としての自信が違う方向でついてきたみたいだ。


「わぁったよ。やりゃいいんでしょ、やりゃ」


「じゃ、いってみよーか。最初はグー、ジャンケン ホイ!」


「うっわ、マジでドキドキする」


「あいこでショッ」


「ウッソー、まじかよっ」


「ありがとうございまーす」


ハチベーがイチ抜けする。


「せーの、最初からっ」


ナツはパーを出した。


「イエースッ!」


「ナツ、テメェ汚ぇぞ!!」


「ノンノンノン。男が小せぇ事でガタガタ言うんじゃねーよ。み、な、み.....くぅ〜ん」


「クソッたれ!覚えとけよ」 

「まぁまぁ、コレでも呑んで」


ハチベーが中ジョッキを持って来た。


「俺ぁ、酒呑めねぇって知ってんだろ!」


「だから呑んで勢いでいくんすよ」


「チッ!」


南は仕方なくビールを呑みほす。


みるみるうちに顔が紅潮してきた。


「よしっ、南いってしまえ」


「おっしゃ!じゃあ、コイツのハートをわし掴んでみっか」


何だかんだ言ってやる気になっている。




「モシー、リョーコちゃん?おハローさん。今何してたの?えっ!?寝てたの?ごめんね〜。いや、チョット話したい事があんだけどさぁ」


後ろからナツが

「クサイセリフ言えよ」

と言っている。


南は人差し指を唇に当て、

「シー」の格好をした。


「えっと、う"ぅ"ん。いいかい?よ〜く聞いておくれよベイベェ。俺のハートは今、悲しみの氷で厚く閉ざされているんだ。いやっ、チョット待って!もぅチョット聞いて。いい?その氷ったハートをリョーコちゃんの熱〜い熱視線で溶かしてくれないかぃ?アッ....」


電話を一方的に切られたらしい。


「薬のやりすぎて遂にイカれたんじゃない?だってさ」


振り向くと、さっきまで向こうに居たサリーとコヤジも聞いていた。


「何でお前らまで居んだよ!ジャンケンしてねぇだろっっ!?」


「お前、世界一恥ずかしい奴だな」


サリーが冷たく笑いながらむこうに行った。


「ウルセー!ナツ、どーしてくれんだよ!?俺、リョーコちゃん3ヶ月も温めてきたんだぜ!ハァ〜、俺の夏がどっか行っちまった〜」


「お前、何で本命行くかなぁ。アホだねぇ」


「あ"っ!?だよなぁ〜。クッソ、ハメられたぁー!!!!」






こうやって16歳は暴力とノリだけで駆け抜けていった。


哀しみなんて知る由も無いまま新しい夏が訪れようとしていた。




 

VanillaーEND


次回、新章突入!

いよいよ女の子の登場です。

お楽しみに。

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